【令和2年度改定】2020年度診療報酬改定のポイント整理(諮問~答申~告示までの情報)

2020.3月4日更新(※最新情報を追加・編集していますので、ご安心して閲覧いただけます)
 
本ページでは、2020年度診療報酬改定に向けた審議~諮問~答申の重要情報を抜粋して整理しております。
官報告示に係る「点数・算定要件・施設基準(新旧見え消し版)」および「改定説明会」に関する情報はこちらです(3/5告示情報)
告示後、「白本や疑義解釈」のほか「一般診療所向けの外来医療のポイント整理(簡易版)」や「薬局 掲示用点数一覧」を追加掲載しております。
 
 
※次期改定に関する情報はこちらです。

【令和4年度改定】2022年度診療報酬改定のポイント整理

 
 
確認 Keyword

・2020年度 改定スケジュール

・改定の基本方針改定率

個別改定項目のポイント

点数・算定要件・施設基準の告示情報および疑義解釈(※随時更新中)

 

(作成情報)
  
「個別改定項目」をベースに調剤向け「新旧対比表」と「確認ポイントQ&A集」を作成しました。

「個別改定項目」答申資料
 
「個別改定項目」の調剤抜粋版を更新しました。ご活用くださいませ。
 
「点数・算定要件・施設基準(新旧見え消し版)」および「改定説明会」に関する情報(3/5告示情報)。

■ 2020年度 改定スケジュール

  • 前年(2019年)は中医協において「既存点数の算定要件と点数の見直し」および「新設点数の設定」の審議が行われつつ、社会保障審議会における「改定の基本方針」の策定、そして年末に「改定率の決定」が行われました。
  • 年を明けて2020年1月15日の諮問を受けて、1月下旬に「個別改定項目(短冊)」が公表され、いよいよ2月中旬の答申により点数公表が予定されています。答申前までは改定の方向性が重要視されますが、答申後は点数の情報が加わることでガラリと空気が変わるのが例年の改定模様であり、今後の情報の変化に注視していきましょう。
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  • (1)基本方針の策定、改定率の決定      :12月10日に基本方針、改定率は12月17日に決定
    (2)諮問および現時点の骨子(公聴会資料)  :1月15日に諮問、1月24日に公聴会開催
    (3)個別改定項目案の公表(点数なし短冊)  :1月29日(その1)、1月31日(その2)、2月5日(その3)に公表
    (4)個別改定項目の決定(点数あり=答申)  :2月7日
    (5)点数算定の要件など公表(官報告示)   :3月上旬(前回3月5日)
    (6)厚労省疑義解釈及び各団体Q&A     :3月下旬(前回3月30日以降随時、日医Q&Aは3月5日)
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■ 個別改定項目(点数なし短冊)のトピックス・注目ポイント

  • 入院(主に病院)

  • 入院医療全体としては、前回改定において、入院料に係る抜本的な報酬体系の見直しが行われたため、今回は一部テコ入れという印象です。しかしながら、テコ入れといっても、病院経営の生命線ともいえる入院料の見直しですので、特に要件の厳格化に対して注意していかなければなりません。そして、働き方改革の推進に関しても要所を締めて対応していくことで、職場環境の改善が図れるでしょう。
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  • 急性期で特に注目されるのは、地域医療構想に掲げる病院再編を誘導する看護必要度の要件の厳格化を起点に、入院料毎の基準の段差を広げて(ふるい落としにより)各入院料に相応しい患者像を明確にしていく方針です。基準は急性期1:看護必要度I・31%、看護必要度II・29%、急性期2:看護必要度I・28%、看護必要度II・26%、急性期3:看護必要度I・25%、看護必要度II・23%、急性期4:看護必要度I・22%、看護必要度II・20%)となりましたが、今回は序章に過ぎません。2025年に向けて、2022年と2024年の残り2回改定でさらに段差を広げていくのは明白であり、病床再編のゴールがようやく見えてきたという展開になってきました。
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  • そして、回復期に関わる評価では実績のハードルを高める見直しを行いつつ、病床機能の役割を徹底させる見直しが顕著となっています。地域包括ケアは自院内転換に一定の制限を加えることで在宅等からサブアキュートの患者を受け入れる本来の重要な機能を評価していく方向であり、回復期リハビリにおいてもアウトカムを評価したリハビリテーション実績指数の見直しが予定されています。慢性期に関わる療養では経過措置1が4月以降も存続される見込みとなっています。
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  • 「働き方改革」の推進に関しては、救急病院以外は蚊帳の外(他人事)ではなく、院長・事務長クラスは「医師労働時間短縮計画」と「評価機能について注視していく必要があります。なぜなら、言うまでもなく労基法は医療法以上に厳格だからです。とりわけタスクシフトに関与し、医療従事者自らの働き方に関わる人員基準の要件緩和に関しては、経営陣のみならず医療従事者自身(労働者)も積極的に情報収集していく必要がありそうです。
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  • 外来・在宅(主に診療所)

  • 外来は、例年通りに微風の改定になる見込みであり、かかりつけ医機能の強化と重症化予防に関する点数を中心に見直しが予定されています。かかりつけ医機能の評価では、「機能強化加算」の見直しとして患者が得られるメリット等を文書で説明する等の要件が追加され、「地域包括診療加算」は対象の拡大を図る要件の緩和により、かかりつけ医の裾野が広げられた印象です。在宅医療においても前回改定のテコ入れが多く、改定の影響が少ない印象です。
 
大きな変更点が少ない中、前回改定で診療報酬上の評価が盛り込まれたオンライン診療は、患者の安全を担保しつつ、対面診療を補完する前提のまま、実施方法や対象疾患が拡大される見通しとなった点に注目です。政府の目指す「一気通貫の在宅医療」の実現に向けて、薬局におけるオンライン服薬指導の評価も組み入れたことで、患者の利便性向上だけでなく、慢性疾患患者の継続的にフォローする仕組みとしても注目されています。さらには、紙の処方箋のやり取りを解消するため、電子処方箋の運用ガイドラインを見直して完全電子化の環境の整備を進めていく運びとなっています。
オンライン化による提供体制の整備は病床再編の受け皿としても期待される側面があり、特に在宅患者に関わる医療機関では、患者ニーズの把握とともに環境変化の動きを押さえておくことが大切です。
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  • 調剤(薬局)

  • 調剤報酬は、2025年を見据えた「患者のための薬局ビジョン」の実現を目指した方向性に沿って、かかりつけ薬局の再編や対人業務へのシフトを促す見直しとなっています。対人業務に関する「かかりつけ薬剤師指導料」の評価は期待されるものの、新設される指導関連の点数は対象患者が限定的であり、大幅な収入増は難しいといえます。
  • 一方、最もインパクトのある見直しは、調剤基本料の算定区分に係る処方箋の集中率と受付回数の見直しに伴う調剤基本料1のふるい落とし(基本料2および3の対象範囲の拡大)と、同一敷地内薬局の区分が診療所にも波及された特別調剤基本料の拡大であり、該当すれば大きなダメージを強いられるため、今後の詳細な施設基準の確認が不可欠です。

  • この他、改正薬機法との兼ね合いとして、改正法の一部施行によりオンライン診療に連動したオンライン服薬指導が調剤報酬上で評価される見込みである点に注目です。オンライン服薬指導の評価は対面とオンラインを組み合わせた服薬指導を前提とし、オンライン診療時と在宅訪問診療時の2パターンが予定されています。オンライン服薬指導の導入は、オンライン診療に紐づく処方医と患者間の合意により決定され、患者との顔の見える関係があって成り立つ仕組みである点が押さえておきたいポイントです。
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■ 2020改定の方向性=「働き方改革推進型」&「前回踏襲型」改定へ

  • 改定の基本方針(重点課題)や改定率、個別改定項目を踏まえた改定の行方

  • 2020年度改定は『健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現』をメインテーマに、「医療従事者の負担を軽減し、医師等の働き方改革を推進(視点1)」を重点課題に掲げる基本方針が、2019年12月10日に決定されました(下図)。「地域包括ケアシステム」は視点1から視点3へ事実上の降格となり、働き方改革を前面的に推進していく方向性が鮮明になってきた点に注目です。ここ数回の改定において「地域包括ケアシステム」の構築を目指した改定内容が目白押しでしたが、2040年を見据えた「全世代型社会保障」へとキーワードが切り替わった点を押さえておきましょう。「地域包括ケアシステム」が廃れるとか無くなるとかいう話ではなく、「地域包括ケアシステム」の構築は「地域共生社会」の実現に向けた通過点だったと理解することが大切です。
 
基本方針は、2040 年の医療提供体制の展望を見据え、「地域医療構想の実現に向けた取り組み」&「実効性のある医師偏在対策」&「医師・医療従事者の働き方改革」を三位一体で推進し、総合的な医療提供体制改革を実施していくため、医師等の働き方改革を重点課題に据えるとともに、健康寿命の延伸や全世代型社会保障への取り組みが重点化されています。
 
重点課題となった医師等の働き方改革に関しては、2024年4月から医師の時間外労働の上限規制が適用される予定であり、大半の病院では自らの状況を適切に分析し、労働時間短縮に計画的に取り組むことが大きな課題となっています。その課題を解消するため、厳しい勤務環境を改善する取り組みに対して、医療機関内における労務管理や労働環境の改善のためのマネジメントシステムの実践に資する取り組や、タスク・シェアリング/タスク・シフティングおよびチーム医療を診療報酬上で評価されていきます。この他、届出・報告の簡素化を図りつつ人員配置の合理化、ICTを活用した医療連携の取り組みなどを推進する改定となります。
 
ただし、すべての病院に働き方改革の恩恵がある訳ではない点に留意しなければなりません。改定率による配分では、「救急病院等における勤務医の働き方改革への特例的な対応」という極めて稀な名目で、診療報酬において公費ベース126億円が充当されました。さらに、この他にも地域医療介護総合確保基金において公費ベース143億円が充当されることとなりましたが、上記の通り、その対象病院は限定的であり、救急医療の最前線で診療する過酷な勤務環境の改善に対する支援に使われることになります。
 
具体的には、診療報酬上の直接的な評価は救急医療体制により年間救急車等受入2,000台以上の3次救急に携わる医療機関(B水準)に限られます。これに該当しない大半の病院は評価が全くない訳でなく、改定における医療従事者のシフト調整など働き方改革の推進に寄与する人員基準の緩和やタスクシフトに注目していく必要があります。
これに対し、地域医療介護総合確保基金における支援は、診療報酬の対象とならなかった救急車受入件数が1,000台以上2,000台未満のB水準相当の病院で、地域医療において5疾病5事業などの医療計画において重要な役割を担い、かつ過酷な勤務環境となっている場合、医師の労働時間短縮のための体制整備が予定されています。支援は、総合的な取組に要するICT等機器、休憩室整備費用、改善支援アドバイス費用、短時間勤務要員の確保経費等をパッケージとして補助することが予定されています。
 
改定の大局的な方向性としては、「働き方改革の推進」が前輪であるに対し、前回改定においてほぼすべての点数体系において抜本的な整備が済んでいるため、今回はその不具合をテコ入れする「前回踏襲型」の小幅な改定は後輪の役割を果たし、「全世代型社会保障」の実現に向かって前進していく改定となっていきそうです。
医療機関等の皆様におかれましては、「個別改定項目」の着目ポイントとして、まずは算定回数の多い個別点数が盛り込まれているか否かを確認し、点数や要件の変更に注視していく必要があります。点数は2月中旬の答申において、詳細な算定要件や施設基準は3月上旬の官報告示の確認が不可欠です。
 
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医療機関等における「働き方改革の概要」をこちらをご参考にしてください。
 
 
  • 改定率のポイント

  • 2020年度改定の全体改定率は、12月17日に来年度予算編成の中で、厚労相と財務相の大臣折衝により、約500億円の削減規模となる▲0.46%相当と決定しました。その内訳は、診療報酬本体が+0.55%、薬価・材料は▲1.01%となり、診療報酬本体の内訳は技術料の比率に応じた医科:歯科:調剤=1:1.1:0.3が維持され、医科+0.53%、歯科+0.59%、調剤+0.16%となりました。
    注目すべきは、これとは別枠で使途が特定された特例対応として「救急医療の提供実績が一定以上の病院への働き方改革の推進」に+0.08%が本体部分に充当された点です。その理由は、前述した基本方針の重点課題に掲げた働き方改革を実現するためには、特に長時間勤務が過剰な救急病院等の労働環境の改善が課題となっているからです。さらに、地域医療介護総合確保基金における支援(補助金)に関しても注目される動向となります。
    なお、2000年以降の改定率の推移(下表)を確認すると、2002~2008年は小泉政権による聖域なき構造改革の一環として、本体改定率もマイナスとなりました。その後、前々回改定以降も全体改定率がマイナスに転じて厳しい改定が続き、今回も含めて4回連続のマイナス改定となっています。
     
  • https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000577669.pdf
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【まとめ】改定審議の着目ポイント

2019年10月の消費税10%への引き上げに伴い、「社会保障・税一体改革」は完遂しました。それに替わるのが、基本方針にも盛り込まれた「全世代型社会保障」です。「全世代型社会保障」は基本的にはこれまでの施策の延長であり、特に重視されているのが「給付と負担」の見直しです。所得・資産に応じた負担を患者・利用者に求めていく方針であり、最終的には「マイナンバーカードおよびマイナポータル」を起点とした健康と財産(税金)の管理を連動させて、持続可能な社会保障制度に適応させていく方向になると予測されます。
 
診療報酬改定は、ミクロ的には医療機関や薬局の経営を左右する側面がある一方で、医療費をコントロールしつつ、これらの施策を誘導するマクロ的な役割がある点を再認識することが大切です。そして、診療報酬改定に左右されやすい経営から脱却していくには、保険外サービスの拡充が不可欠であり、地域性や患者ニーズに合わせて展開していくことが必要だといえるでしょう。
 
(作成:ヘルスケア情報専任者 笹森昭三) 
 
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