医療DX2023 まとめページ【医療DXのポイント厳選・早わかり解説】

医療・介護情報編 2023年11月2日更新(※都度、最新情報に更新していきます)
 
 
本編では、政府の「医療DX推進本部」および厚労省の「医療DX令和ビジョン2030 厚生労働省推進チーム」、「医療DX関連の各種ワーキンググループ」の関係資料をもとに、医療・介護事業者(医療機関・薬局・介護施設・介護事業所等)における「医療DX」のポイントを整理していきます。
医療・介護事業者としての関与のみならず、国民・患者・利用者が「医療DX」にどのように関与するかも含めて、最低限押さえておきたい内容を抜粋(詳細は割愛)しましたので、少しでもご参考にして頂ければと思います。
 

▼押さえておきたいキーワード

全国医療情報プラットフォーム

・電子カルテ情報の標準化

・診療報酬改定DX

・民間PHRサービスと情報銀行

・介護DX(医療DXとの関係)

・介護ロボット導入支援事業(補助金)
・ICT導入支援事業(補助金)

1. 医療DXによって、これまでの環境や仕組みが大きく変わる

  • 医療DXとは、保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えることと定義されています(下図)。
 
簡単にいえば、「ヘルスケア情報を集積した基盤=全国医療情報プラットフォーム」を構築して、「医療機関等の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化」を図り、「国民・患者がより良質な医療やケアを受けられるようにこれまでの仕組みを変える」のが、医療DXの役割・意義となります。
 
医療DXは「オンライン資格確認システム」を起点(ハブ)に広げられ、2023年1月に「電子処方箋管理サービス」との連結がなされ、次に2025年を目途に「電子カルテ情報交換サービス(自民党案では電子カルテ情報共有サービス)」が接続されていきます。そして、マイナンバーカードなしでマイナンバーポータルにログインできる「スマホ用電子証明書搭載サービス」を拡充させ、2024年4月にはマイナ受付のスマホ対応が開始される予定となっています。
 
「全国医療情報プラットフォーム」の構築を進めていくうえで、最も重要なヘルスケア情報はその中核を成す「レセプト情報」と「カルテ情報」になります。「レセプト情報」の集積は「オンライン資格確認システム」、「カルテ情報」の集積は電子カルテ情報交換サービスにおいて進められ、(それぞれのすべての情報が活用される訳ではなく)必要とする厳選された情報のみが活用されます。そして、最終的にビッグデータとして研究・開発をはじめ、民間PHRサービスや情報銀行における活用が見込まれている状況となっています。
 
 
 
 
  • 2. 優先&重視している医療DXの三本柱、これが医療DX令和ビジョン2030

  • 医療DX令和ビジョン2030では、医療DXを進めていく上で「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」が重点施策に掲げられています。
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▼全国医療情報プラットフォームの創設

医療DXの推進に欠かせない医療・介護・健康情報を集積していく基盤は、オンライン資格確認システムのネットワークを拡充した「全国医療情報プラットフォーム」が担っていきます(下図)。「全国医療情報プラットフォーム」では、クラウド間連携を実現し、医療機関間のみならず自治体や介護事業者等間も、必要なときに必要な情報を共有・交換できる構想となっています。これにより、医療機関等では患者の必要な情報の閲覧・共有ができ、より良い医療につながるとともに、患者自らの予防・健康づくりを促進できることが期待されています。
 
 

▼電子カルテ情報の標準化

国の目指す「電子カルテ情報の標準化」は、電子カルテ自体の機能やデータベースの標準化ではなく、出入力データの標準規格化を目指しています(下図)。
 
 
電子カルテ情報の標準化の仕組みは電子カルテ情報交換サービス(自民党案では電子カルテ情報共有サービス)」として、2025年頃までの構築を目指していく構想となっています(下図)。
標準化する電子カルテ情報は「2文書(診療情報提供書・退院時サマリー、マイナポータルで連結された健診結果報告書を含めると3文書)と6情報(傷病名・アレルギー・感染症・薬剤禁忌・検査・処方)」からスタートし、順次、対象情報の範囲を拡大していきます。異なるベンダー間のデータ連結を可能とするインターフェイスの統一化として「HL7 FHIR規格(Web通信に対応した柔軟にデータ形式変換可能なフォーマット)」を標準規格とすることが決定されています。
 
 

▼診療報酬改定DX

「診療報酬改定DX」の目指す最終ゴールとして、進化するデジタル技術を最大限に活用し、医療機関等における負担の極小化が掲げられ、具体的には「全国医療情報プラットフォームとの連携」、中小病院・診療所が導入しやすい「電子カルテとの一体化も視野に入れた標準型レセコン」の開発・リリースが目標となります(下図)。
 
 
「診療報酬改定DX」の最終ゴールに向けたスケジュールは、アジャイル開発で共通算定モジュールの試行運用を重ねて、共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善を行い、2024年度から段階的に実現し、2028年度から提供を拡大していくことを目指しています。長年の課題であった異なるベンダー間のデータ連結は、「電子カルテ情報の標準化」と「診療報酬改定DX」により、医事マスタの大改修にも波及される形となる模様です。
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    3. 民間PHRサービスと情報銀行の行方

    • ▼民間PHRサービス
      PHR(Personal Health Record)は、個人の健康・医療・介護に関する情報であり、これらの情報を活用したサービスがPHRサービスとなります。PHRサービスでは、PHRを自分自身で生涯にわたって管理・活用することによって、自己の健康状態に合ったサービスの提供を受けることができることを目指しています。
       
      PHRサービスは、マイナポータルやPHR等事業者が行うサービスにおいて、医療DXで取扱うデータを活用して、国民・患者本人が適切に自身の健康状態を把握できるとともに、行動変容につながる仕組みとして期待されています。電子カルテ情報の標準化と同様に、PHRサービスにおいてもデータ規格の標準化が課題であり、医療DXの実現に向けた過渡期特有の共通課題となっています。
      PHRサービスは、2021年10月に健診データを皮切りに、マイナポータルサイトで閲覧できるようになり、制度的にも実装的にもPHRデータ利用の環境整備が急速に進められています。民間PHRの動向としては、ウェアラブル端末やスマートフォン等を活用した個人の日々の活動から得られるPHRデータの取得・分析が普及し、個人の日々の活動から得られるPHRデータが急速に蓄積されつつあります。
       
      患者の服薬記録を管理する「電子版お薬手帳」も民間PHRの1つであり、API連携によりマイナポータルの薬剤情報等を取り込む機能(下図)をはじめ、電子処方箋やオンライン服薬指導・オンライン診療との連携、他のPHRなどの関連サービスと連携した対応が求められるなど、医療DXの実現に向けたICTインフラ整備がPHRサービスにも波及している点に留意しなければなりません。
       
      具体的な例としては、お薬手帳アプリを使用する患者が併用禁忌などのOTC薬を購入した場合(もしくは購入する前にバーコードをかざすと)、警告アラームが発信されるなど、新規サービスの創出や国⺠⽣活の利便性の向上などが期待されています。
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      ▼情報銀行
      情報銀⾏は、PHRを含むパーソナルデータの流通・活⽤を効果的に進めるため、パーソナルデータを安全に管理して、簡単に企業とやり取りを仲介してくれる仕組みとなります。まだ未確定のルールも多く、総務省で検討を進めつつ、総務省/経産省の情報信託機能の認定に係る指針に定義された情報銀⾏として、すでに金融・IT・電力系の企業が参入している現状となっています(認定事業者一覧)。
       
      情報銀⾏は、本人から個人情報を預かって、第三者に提供し、第三者から本人に便益が還元されるビジネスモデルであり、患者のかかりつけ医やかかっりつけ薬剤師においては、患者へのデータ提供に関する助言、医療専門職の関与が必要となります。そして、民間PHRサービスの拡大とともに、情報銀⾏は医療関係者としての関与はもちろんのこと、個人レベルでもライフスタイルに介在や浸透していく可能性があるため、押さえておきたいキーワードといえます(下図)。
       
      私たちに身近な例でいえば、金融機関では「お金」を取扱うに対し、情報銀行では「情報」を取扱う形となります。金融機関では「預けたお金に対する利息」が顧客に還元されるのに対し、情報銀行では「預けた情報に対する便益」が顧客に還元されます。「預けた情報に対する便益」とは、関連企業のクーポンや割引チケット、無料サービスなどをイメージすると分かりやすいでしょう。便益は、利用者個人の利用に対する直接的便益、利用者個人以外のために利用された間接的便益があります。
       
      なお、情報銀行で取扱うPHRにはレベル区分(レベル0~3の4段階)があり、上記で触れた「お薬手帳」はレベル2(健康・医療分野の要配慮個人情報)に該当します。
       
       
       

      4. 医療DXにおける介護DXの位置づけ

      「全国医療情報プラットフォーム」では、医療情報のみならず介護情報も集約されていきます(下図)。したがって医療DXには介護DXも含まれるため、介護事業者においても医療DXに関与している点を認識していく必要があります。そして、介護保険の保険者である自治体にも関与が及ぶ構想となっています。
       
      介護DXは介護単体で進められている訳でなく、医療DXの一部として推進されているため、介護事業者が今後の介護DXに対応していくには、医療DX全体の理解度を高めていくことが重要になります。もちろん医療機関等においても、介護情報を含む様々な患者のPHRが集約されていく点に留意していかなければなりません。
       
       

      介護ロボット導入支援事業(補助金)

      介護ロボット導入支援事業(補助金)は、これまで年々拡充されてきましたが、2023年度は従前と同じ内容にて実施されます(今年度までの時限措置)。導入補助額(1機器あたり)は移乗支援と入浴支援が上限100万円(それ以外は上限30万円)、見守りセンサーの導入に伴う通信環境整備に対しては上限750万円と設定されています(下図)。
      補助率は、都道府県の裁量により設定され、導入計画書において目標とする人員配置を明確にした上で、見守りセンサーやインカム、介護記録ソフト等の複数の機器を導入し、職員の負担軽減や効率化などの一定の要件を満たした場合は3/4(それ以外は1/2)を下限に設定されています。
       
       

      ICT導入支援事業(補助金)

      2023年度のICT導入支援補助金は、従前と変わらないまま、新たに財務諸表のCSV 出力機能等を有する介護ソフトが対象に追加されました(下図)。また、今年度も引き続き、「ケアプランデータ連携システムの利用」および「LIFEデータの活用」等に対して、補助割合が3/4に拡充される要件があり、未導入の場合には活用すべき補助金といえます。
       
       
      今般、介護事業者に対して推進されている「ケアプランデータ連携システム」や「科学的介護情報システム(LIFE)」における利用者情報は、利用者の治療やケアに必要な情報の1つであり、「要介護度の改善/悪化」や「ADL維持向上/低下」に関わる利用者情報として、収集した情報のデータ入力が必要とされている状況です。そして、利用者に関する介護情報等を電子的に閲覧できる「全国医療情報プラットフォーム」の構築により、医療機関や介護事業者のみならず、多様な主体が協働して高齢者を地域で支えていく地域包括ケアシステムの深化・推進にも繋がることが期待されています。
       
      こうした医療DXの推進を後押しするために「介護ロボット・ICT導入支援補助金」が展開されている訳であり、経済的な支援が受けられるタイミングでのシステム導入が活用のポイントになります。補助金の活用においては、詳細な補助率や対象枠、募集時期など、各都道府県の地域医療介護総合確保基金の最新情報の確認が必要です。
      併せて、2023年度中に設置される見込みの「介護生産性向上総合相談センター」の動向に注視しつつ、2024年度介護報酬改定に備えて、導入する介護ソフトベンダーの医療DXへの対応を確認し、改修や入替など、次の展望を見定めていくことが重要になります。
       
       

      本編の考察

      医療DXはアジャイル開発で進められています。アジャイル開発とは、スマートフォンのアプリの提供方法と同じで、完成品のリリースではなく、日々改善が進めて機能追加などのバージョンアップを行って、進化させた最新版を更新していくやり方になります。
    • 本編は、ポイントの厳選・抜粋に過ぎないため、関与するサービスや商材を導入の際には、各ベンダへ詳細をご確認いただければと思います(今後、関連サービスや商材のPRを予定しております)。以上、今後の医療DXの展望としてお役立て頂ければ幸いです。
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    (作成:ヘルスケア情報専任者 笹森昭三) 
     
     
      
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