医療機関や介護事業所等における新型コロナ感染対策の重要性

2020.4月24日更新
 
新型コロナウイルス感染者の急増に伴い、感染対策に携われている医療・介護現場の皆様方のご尽力に対し、敬意と感謝を申し上げます。数々の厚労省情報が飛び交い、情報が錯綜しておりますので、現場の皆様に少しでもお役立て頂ければ幸いです。
 
本ページでは、各自治体が公表した「新型コロナウイルス感染症対策に係るチェックリスト」を引用しつつ、「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(厚労省)」を参考に感染対策の基本を再確認していきます。
また、院内感染の拡大を鑑み、日本環境感染学会が策定した「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第2版改訂版」を参考に、医療従事者の曝露のリスク評価と感染対策の重要性を整理していきます。
 
 
確認 Keyword

・新型コロナウイルス対応状況チェックリスト

・感染対策の基本と二次感染防止のポイント

・医療従事者の曝露のリスク評価と感染対策の重要性

 

■ 新型コロナウイルス対応状況チェックリスト

  • 体制整備のチェックポイント

  • 医療機関や介護事業所等では、感染症に対する抵抗力が弱い高齢者等が集う場であるため、医療・介護現場は他業種よりも感染が拡がりやすい状況にある点を再認識しなければなりません。各施設では感染症防止対策や感染症発生に備えた体制整備を再確認し、適切な対応を図ることが重要です(下表)。
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  • 特に衛生用品等の確保が困難な場合があれば、厚労省事務連絡4月14日発出の「サージカルマスク等の例外的取扱いについて」を参照して、再利用の消毒方法や代替品のポイントなどを確認しておきましょう。
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人的対応のチェックポイント

今般、全国各地の医療機関や介護事業所等において、新型コロナウイルスの小規模な感染者集団「クラスター」の形成が散見されるようになり、その対策が問題視されています。とりわけ医療機関や介護事業所等の施設において流行を起こしやすい感染症は、内部で新規に発生することは稀であり、主に外部から持ち込まれているのが実状です。
 
従って、スタッフだけでなく、患者・利用者や来訪者、委託業者も含めて、ウイルスを外部から「持ち込まない」ように留意し、常時マスクの着用と手指衛生を徹底することが感染対策の重要なポイントになります(下表)。
 
そして、特に留意すべき利用者への対応においては、「濃厚接触」になりがちな患者・利用者とスタッフの体調変化の確認を全員で徹底するよう意識づけしていくことが肝要です。マスクの着用は隙間が生じるなど着用方法が適切でない場合は感染予防効果が下がることから、正しい着用方法を再確認して実践していきましょう。
 
 
 
 
 

■ 感染対策の基本と二次感染防止のポイント

感染経路の遮断による感染対策の基本

感染経路は、①接触感染、②飛沫感染、③空気感染、④血液媒介感染があり、それぞれに対し、速やかに予防措置をとることが大切です。新型コロナウイルスに関しては、特に「接触感染」と「飛沫感染」の予防策が必要とされ、ウイルスを施設内に「持ち込まない」「持ち出さない」「拡げない」、この基本原則の徹底がポイントになります(下図)。
 
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  • 感染症発生時に必要な対応、最優先すべき二次感染の防止策

  • どんなに万全な感染対策を行っても人の行き交いがある以上、感染者が出る可能性をゼロにすることはできません。感染者が出てから慌てることのないよう、感染症発生時の対応を事前に想定しておくことが、感染拡大を最小限に留めるために不可欠となります。

  • 感染症発生時の対応は初動が肝心であり、感染状況を把握して二次感染を防止する対応が最優先事項となります(下図)。その際、感染者の状況やそれぞれに講じた措置等の記録として、施設内の患者・利用者と職員の健康状態(症状の有無)と発生した場所毎(居室やユニット等)にまとめておくことで、濃厚接触者の特定もしやすくなるでしょう。
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  • 「管理者」による二次感染防止策

  • ・医師の診断結果や看護職員・介護職員からの報告による情報等により、施設全体の感染症発生状況を把握します。協力病院や保健所に相談し、技術的な応援を頼んだり、助言をもらいます。
    ・職員等に対し、自己の健康管理を徹底するよう指示するとともに、職員や来訪者等の健康状態によっては、入所者との接触を制限する等、必要な指示をします。
     
  • 「職員」による二次感染防止策

  • ・発生時は、衛生学的手洗いや嘔吐物、排泄物等の適切な処理を徹底します。職員を媒介して、感染を拡大させることのないよう、特に注意を払います。
    ・入所者にも手洗いをするよう促します。自分自身の健康管理を徹底します。健康状態によっては休業することも検討します。
    ・医師や看護職員の指示を仰ぎ、必要に応じて施設内の消毒を行います。医師等の指示により、必要に応じて、感染した入所者の隔離等を行います。
     
 
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■ 医療従事者の曝露のリスク評価と感染対策の重要性

  • 新型コロナウイルス感染者の症状としては、発熱、咳、筋肉痛、倦怠感、呼吸困難などが比較的多くみられ、頭痛、喀痰、血痰、下痢などを伴う例も認められます。感染症の潜伏期は約5日で最長14日程度とされ、遷延する発熱を主体とする上気道炎症例、肺炎症例、発症8日以降に呼吸不全が進行し、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を併発して更に重症化する症例があります。

  • 今般では、感染者の増加とともに、海外渡航歴や感染者との濃厚接触のない発熱や呼吸器症状を訴える方のPCR検査の陽性率が高まり、さらには「無症状病原体保有者」が空港検疫等で一定数が確認されるなど、感染経路や感染者の状態も刻々と変化してきた状況です。一般の外来医療では、新型コロナウイルス感染症の診断が困難であり、さらに感染していても特定できない無症状や軽度な感染者が全国どの医療機関でも受診する可能性がある点に留意しなければなりません。
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  • すべての医療従事者は院内感染の防止策として、感染リスクを低減させるため、日本環境感染学会が策定した「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第2版改訂版」に掲載された「曝露のリスク評価(下図)」を参考に対応していくことが肝要です。「曝露のリスク評価」によれば、感染者のマスク着用の有無にかかわらず、例えば、受付で短時間(約1~2分)の会話を交わした場合をはじめ、患者や分泌物/排泄物との接触がない場合には、医療従事者が推奨される個人防護具を着用していない場合でも低リスクだと考えられています。
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  • 感染対策上重要なことは呼吸器衛生/咳エチケットを含む標準予防策の徹底です。この徹底がなされているにもかかわらず、院内感染が続発する背景には、感染の疑いのない熱や咳のない「無症状病原体保有者」が患者やスタッフに紛れていると推察されます。その理由は、厚労省の感染者情報の内訳を確認すると「無症状病原体保有者」は約7%(2020/04/29時点)、この数字は空港検疫や濃厚接触によるPCR検査でたまたまあぶり出されただけに過ぎず、日常にも多くの「無症状病原体保有者」がいると考えられるからです。
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したがって、医療従事者自身も含めて誰もがこのウイルスを保有している可能性があることを前提に、すべての患者の診療において常時マスクの着用と手指衛生を徹底し、状況によっては必要な個人防護具(PPE; Personal Protective Equipment)を選択し、適切に着用して対応する必要があるものと思います。
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  • コロナウイルスはエンベロープを有するため、擦式アルコール手指消毒薬は新型コロナウイルスの消毒にも有効だとされ、手指衛生は適切なタイミングで実施することが肝要です。マスクの着用は従来の各種のエビデンスにより感染予防効果が認められていますが、隙間が生じるなど着用方法が適切でない場合は効果が下がります。また、マスク表面に触わるなどして手指が汚染してしまうことで感染リスクを高める場合もあり、「マスクをつけたら触らない」「マスクの着用前後に手指衛生を徹底する」ことが標準予防策における基本的なポイントになります。

  • もちろん院内感染は医療従事者の尽力だけでまかなえる問題ではありません。感染者との「濃厚接触」とされる1m以内での15分以上の診療や指導等を控えることや、患者のマスク着用の徹底と出入口の手指衛生の励行があって成り立つものです。そして、どんなに万全な感染対策を行っても人の行き交いがある以上、感染者が出る可能性をゼロにすることはできません。
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  • 院内感染になってから慌てないよう感染拡大を最小限に留める感染症発生時の対応を確認しておくことも重要ですし、収束の目途が立たないまま、感染対策に限界があると判断すれば、対面リスクを回避した「新型コロナ特例対応の電話/オンラインによる外来(初再診)の活用」が、すべての患者や医療従事者を守る最善の手立てとなるでしょう。
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【まとめ】新型コロナ感染対策の重要性

現在、未知なる新型コロナウイルス感染症の収束に向けて、治療薬の承認をはじめ、ワクチンや抗体検査の開発など、様々なスペシャリストが尽力されています。そして、感染対策に携われている医療・介護現場の皆様方のご尽力に対し、敬意と感謝を申し上げます。国民一人ひとりの啓発により、この危機を乗り切って、新たな社会へと転換していくことを望むばかりです。少しでもお役立て頂ければ幸いです。引き続きご支援のほど、宜しくお願い申し上げます。
 
(作成:ヘルスケア情報専任者 笹森昭三) 
 
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