HMIレポート
新型コロナ特例対応の電話/オンラインによる外来(初再診)のポイント整理
2020.4月24日更新
新型コロナウイルス感染者の急増に伴い、感染対策に携われている医療現場の皆様方のご尽力に対し、敬意と感謝を申し上げます。数々の厚労省情報が飛び交い、情報が錯綜しているためポイントを厳選いたしました。現場の皆様に少しでもお役立て頂ければ幸いです。
本ページでは、2020年4月10日の事務連絡により実務上4月13日から実施可能となった「新型コロナ特例対応の電話/オンラインによる【外来(初再診)】」に係る医療機関における診療と薬局における服薬指導のポイントについて整理しております。厚労省資料の原本では、やや分かりにくい方向けの取扱説明書のような位置づけになりますので、実際に実施される医療機関・薬局においては原本の熟読が必要ですし、Q&Aを参照する必要があります。。
他方、【入院】に関しては、治療の最前線で尽力される病院に対する評価が盛り込まれております。
【Q&A】計14題を整理(2020.05.01)
【原本】厚労省 中医協総会(2020.04.10)採決資料
【入院】指定感染症病院に対する中等症・重症患者への治療における診療報酬の倍増に係る情報は、以下をご参照ください。
《新型コロナ特例対応の電話/オンラインによる重要情報》
新型コロナ特例対応の電話/オンラインによる診療に係るまとめページ、対応医療機関の一覧(厚労省)
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【患者向け】新型コロナ特例対応の電話/オンラインによる診療を受けるための案内(リーフレット)
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【医療機関向け】新型コロナ特例対応の電話/オンラインによる診療を行う場合の手順と留意事項
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【医療機関向け】通常のオンライン診療の関係情報
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【医療機関・薬局向け】新型コロナ特例対応の電話/オンラインによる診療・服薬指導(原本資料)
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確認 Keyword
・特例的な電話/オンラインによる外来(初再診)の緩和の背景と全体像
・その該当患者への診療(初再診)と服薬指導および医薬品配送のポイント
(参考)通常のオンライン診療&服薬指導のポイント整理
■ 特例的な電話/オンラインによる外来(初再診)の緩和の背景と全体像
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今般、新型コロナウイルス感染者の急増に伴い、4月7日に政府が「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を閣議決定しました。
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この閣議決定を踏まえ、ウイルスの感染拡大による院内感染の影響や医療機関の受診が困難な外来患者への非常時の対応として、時限的・特例的な電話/情報通信機器(オンライン)による診療と服薬指導の取扱いが決定され、4月10日の事務連絡により新たな対応が実施可能となりました。今回の特例的対応は感染が収束するまでの時限措置となり、原則3ヶ月ごとの検証により見直しとなり、7月初旬に変更となる場合もありますので、その点ご注意ください。
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今回、前例のない初診対面原則の緩和が必要となった理由は、発熱等の新型コロナウイルスの感染疑いがある患者の急増により、救急医療や入院医療の提供体制が疲弊する中、それぞれの機能や態勢を維持していくには不要な救急要請や軽度な感染者の入院などをコントロールしつつ、さらに院内感染を懸念して来院できない外来患者への非対面による受診方法を許容して、医療崩壊の連鎖を食い止める必要があったからです。 -
医療機関や薬局では、「再来」時の初診のみならず、「新患」に対しても電話/オンラインによる診断と処方、薬局における服薬指導ができる前例のない取扱いとなった点を理解し、今回の特例的なスキーム(下図)を把握して希望する患者への対応が不可欠となります。実施に当たり、医療機関では新型コロナ特例対応の電話/オンラインによる診療を行う場合の手順と留意事項を確認し、希望する患者がいれば、電話/オンラインによる診療を受けるための案内(リーフレット)を用いた説明および配布が可能です。
■ 医療機関における特例的な電話/オンラインによる初診対応のポイント
今回の初診対面原則の時限的緩和における診療報酬上の取扱いの見直しのポイントは、過去の受診歴のない「新患」と、受診歴のある「再来」における初診(既往歴以外の新たな症状に対する診療)に対する臨時的な緩和策であり、感染が拡大する中で緩和してきた「電話等再診」の仕組みも引き続き適用となります(下図)。
- 押さえておきたいポイントを厳選すると、医療機関では、患者から電話/オンラインによる診療の求めを受けた場合、電話等による診断や処方が医学的に可能と判断した範囲において対応が可能となります。電話/オンラインによる診療実施の前提は、電話等の診療に適さない症状や疾病等には対応できない旨の患者への説明(診療が不要な場合は自宅療養、対面診療が必要な場合は受診勧奨)のほか、急病急変時の対応方針や対応が困難な場合の他医療機関への紹介ができることが求められるなど、通常の診療と同等の責務が課せられています。
今回の電話/オンラインによる診療は、「診療録等による患者の基礎疾患の把握」の有無を起点に、「新患or再来、初診or再診」を判断し、なりすましを防ぐため「健康保険証の確認」をはじめ、「患者負担金の支払い方法」や「医薬品の受け渡し方法(処方日数や処方薬は一部制限)」などの確認を要し、診療の可否を判断する必要があります。そして、診療報酬上の評価に関して、電話とオンラインでは再診料に違いがあったり、医学管理料を算定できる点数が慢性疾患に限定されている点に留意しなければなりません(下図)。
このように特例的にすべての「新患」の診療が時限的に容認された訳ですが、受診歴も診療録もなく、健康保険証で本人確認するとしても、どこの誰かも分からない「一見さんの患者」を診療するのはリスクがあると判断し、初診対応を実施するのは一定の医療機関に限られています(全国の医療機関リスト)。このリストでは、「新患」のみならず受診歴のある「再来」に対する臨時処方(初診)とかかりつけ患者への再診に対応する医療機関も明示されています。
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- 「電話」と「オンライン」の患者希望の媒体としては、慢性疾患の高齢者が多い内科などでは「電話」、小児科などでは「オンライン」の割合が高まると予想され、患者の年齢層や診療科目により異なる点に着目し、特長や確認事項に留意しながら対応していくことが肝要です(下図)。
現場での一番の心配事は、患者負担金の受領(未収金=取りっぱぐれ)だと思います。負担金の精算は「後日振込」などが明示されておりますが、現実的に通い詰めた慢性疾患のかかりつけ患者であれば「次回来院時徴収」とする形も想定される行為です。「次回来院時徴収」は金銭トラブルに発展する可能性も否めない点に注意しなければなりません。もし「未収金」の不安を完全に解消したいのであれば、「オンライン診療」を導入するのが早道です。「オンライン診療」ではオンライン決済(クレジット処理)がスタンダードであり、2018年度の点数化以降、使い勝手もよくなっていますので、新たな診療スタイルが、減患対策・患者満足度の向上に寄与できるでしょう。
なお、この特例的な制度の仕組みは、感染リスクを回避するため、医療機関と薬局両方の非対面の形式が想定されていますが、患者によって医療機関の受診は非対面、薬局の医薬品の受渡しは対面、逆に医療機関の受診は対面、薬局の医薬品の受渡しは非対面などと希望することも想定されます。こうしたイレギュラーな希望に対しては感染リスクを考慮し、オール非対面を推奨しつつ、患者の希望に沿って柔軟に対応し、薬局の医薬品の受渡しを非対面と希望する場合には、処方箋の備考欄に「0410対応」と明示して薬局へのFAX送付を徹底すれば大きな混乱を防ぐことができるでしょう。
■ 薬局における特例的な電話/オンラインによる服薬指導のポイント
- 医科同様に、新型コロナウイルスの感染拡大による院内感染の影響や医療機関の受診が困難な外来患者への非常時の取扱いとして、希望する患者に対して、薬局における電話/オンラインによる服薬指導と医薬品の配送の実施が可能となりました(下図)。
ポイントを整理すると、当該患者の処方箋の備考欄には、一般患者の場合には「0410対応」、軽度な感染者であれば「CoV自宅・CoV宿泊」と明示され、通常の処方箋との違いが判別しやすい形となります。処方箋を応需した薬局では、薬剤師が患者・服薬情報に基づき適切な対応ができる場合、薬剤の適正使用を確保するとともに、不正入手防止策を講じた上で、当該患者が希望する場合には、電話/オンラインによる診療の場合に限らず、対面診療の場合でも電話/オンラインによる服薬指導と医薬品の配送に対応する必要があります。
また、当該患者に対する医薬品の処方は制限され、「新患」の処方日数が上限7日間とされたほか、麻薬及び向精神薬、ハイリスク薬の処方ができない取り決めとされ、「再来」の場合には処方日数は制約なく通常通り可能ですが、こちらも麻薬及び向精神薬の処方ができないこととなっています。
服薬指導に関する調剤報酬上の評価は、通常の場合と同様です。特段、電話/オンラインだから算定要件が緩和された訳でなく、対面と同様に、対人業務の実践が求められていることがうかがえます。したがって、日常的にコミュニケーションを図り、顔の見えるような信頼関係が構築できている「かかりつけ(馴染み)の関係性」があれば、違和感なく円滑に指導することができるでしょう。
医薬品の配送に関しては、令和2年度 厚労省補正予算において「電話や情報通信機器による服薬指導等を行った患者に対して薬局が薬剤を配送等する費用を支援する」旨が決定(※4月30日可決)され、日本薬剤師会等を通じて、患者が負担する配送料の全額または一部が助成される方針が固められたため、今後の地域薬剤師会等における最新情報の確認が必要です(宮城県の例)。
さらには、医師が電話等により患者に対して一般用医薬品を用いた自宅療養等の助言等を実施した場合においては、薬局は当該患者の求めに応じて一般用医薬品を患者宅に提供する場合も想定されているため、そうした点にも留意していかなければなりません。
なお、オンライン服薬指導に際して、どのような手順で進めるのか、イメージがつかない方も多いかもしれませんが、こうした不安に対しては、特区で先駆けて実施された事例を参考にしていくのが賢明です。また、再来の長期処方による医薬品代が高額になる場合の未収金対策として、医薬品の受け取り(配送)時に決済ができるサービスを活用するなどの工夫も必要だといえるでしょう。
(参考)通常の「オンライン診療」と「オンライン服薬指導」のポイント整理
- 2018(H30)年度診療報酬改定において新設されたオンライン診療の診療報酬上の評価は、オンラインシステム等の通信技術を用いて、再診料に相当する「オンライン診療料」と管理料の「オンライン医学管理料」と「オンライン在宅管理料(在宅時医学総合管理料)」が設定されました。これらのオンライン専用点数は継続的な療養計画に基づく所定の管理料の算定患者のみが対象となり、対面診療を原則としたオンライン診療を組み合わせた管理が評価されています。
- そして、2020(R2)年度改定において、対象患者や算定回数などに一部制限があるものの、対面診療を補完する前提のまま、実施方法や対象疾患が拡大されました(下図)。さらには、薬局におけるオンライン服薬指導の評価も盛り込まれたことで、患者の利便性向上や、慢性疾患患者の継続的にフォローする仕組みとしても注目されています。
オンライン診療等は誰でも好きな時に利用できる訳ではなく、対面による診療や服薬指導を補足する位置づけにあり、顔の見える関係がある中で、双方の意向がマッチした場合の提供に限られることから、予約診療の進化版のような仕組みだといえます。
対象患者の例としては、日中に受診する時間がとれないサラリーマン、外出が困難な高齢者、そして居宅で安定した状態にある在宅患者などが該当し、それぞれの通院の負担軽減と利便性の向上が期待されています。オンラインシステムの利用により、システム利用に係る経費や医薬品の配送費が実費相当はかかるものの、通院時の交通費はかからなくなるため、患者負担の差異が生じる点は導入前に確認しておきたい事項です。
今回の特例的な電話/オンラインによる診療や服薬指導の取扱いの緩和への対応を通して、患者のオンライン診療とオンライン服薬指導に対する新たなニーズが一気に加速する可能性もあるため、医療機関や薬局では導入検討の必要性が高まってきたといえるでしょう。
【まとめ】オンライン診療とオンライン服薬指導の将来性
今回の新型コロナウイルスの感染拡大による特例的な対応とは別に、2020(R2)年診療報酬改定では、オンライン服薬指導に対する調剤報酬上の評価(9月1日の改正薬機法施行後)が新たに盛り込まれ、環境整備が進められてきた状況です。
オンライン服薬指導の評価が組み込まれた背景には、政府の目指す電子処方箋の本格稼働を見据えた「一気通貫の在宅医療」の実現に向けた仕組みとしての側面と、「地域医療構想」における病床の機能分化や削減の流れの一端で、訪問診療を受ける患者が全国的に大幅に増加し、在宅医療のニーズが一段と拡大していく中で受け皿としての機能やハードを整備する側面があります。
つまり、オンライン診療およびオンライン服薬指導は一過性の措置ではなく、近未来を見越した制度的な仕組みだという点を再認識する必要があります。今般、時代の変化とともに刻々とオンライン化が社会に浸透していく中、新たな診療スタイルとして定着していく可能性が高い点に着目し、減感対策(患者を減らさない)として取り入れていく視点も重要だといえるでしょう。
(作成:ヘルスケア情報専任者 笹森昭三)
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