2026年度改定に向けた課題整理「基本方針の策定に向けた基本認識、基本的視点、具体的方向性②【重点課題】」
2025/10/24
今回は、2025年10月23日、社会保障審議会医療保険部会において示された「基本方針の策定に向けた基本認識、基本的視点、具体的方向性②」のポイントを整理していきます。
前回の①をベースに、今回の②では、「視点1:物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応」が【重点課題】と示されました。
■ 4つの基本的視点に基づく具体的な方向性(例示)
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視点1 物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応【重点課題】
- ○ 医療機関等が直面する人件費、委託費や医療材料費等といった物件費の高騰を踏まえた対応
- ○ 賃上げや業務効率化・負担軽減等の業務改善による医療従事者の人材確保に向けた取組
- ・ 医療従事者の処遇改善 ・ 業務の効率化に資する ICT 、AI、IoT等の利活用の推進 ・ タスク・シェアリング/タスク・シフティング、 チーム医療の推進 ・ 医師の働き方改革の推進/診療科偏在対策 ・ 診療報酬上求める基準の柔軟化
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視点2 2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括 ケアシステムの推進
- ○ 患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価
- ・ 患者のニーズ、病院の機能・特性、地域医療構想を踏まえた、医療提供体制の整備 ・ 人口の少ない地域の実情を踏まえた評価
- ○ 「治し、支える医療」の実現
- ・ 在宅療養患者や介護保険施設等入所者の後方支援機能(緊急入院等)を担う医療機関の評価 ・ 円滑な入退院の実現 ・ リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進
- ○ かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価
- ○ 外来医療の機能分化と連携
- ○ 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
- ○ 人口・医療資源の少ない地域への支援
- ○ 医療従事者確保の制約が増す中で必要な医療機能を確保するための取組 ・ 業務の効率化に資する ICT 、AI、IoT等の利活用の推進(再掲)
- ・ タスク・シェアリング/タスク・シフティング、 チーム医療の推進 (再掲)
- ○ 医師偏在対策の推進
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視点3 安心・安全で質の高い医療の推進
- ○ 患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価
- ○ アウトカムにも着目した評価の推進
- ○ 医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価
- ○ 質の高いリハビリテーションの推進
- ○ 重点的な対応が求められる分野への適切な評価
- ・ 救急医療の充実 ・ 小児・周産期医療の充実 ・ 質の高いがん医療の評価 ・ 質の高い精神医療の評価 ・ 難病患者等に対する適切な医療の評価
- ○ 感染症対策や薬剤耐性対策の推進
- ○ 口腔疾患の重症化予防等の生活の質に配慮した歯科医療の推進、口腔機能発達不全及び口腔機能低下への対応の充実、歯科治療のデジタル化の推進
- ○ 地域の医薬品供給拠点としての薬局に求められる機能に応じた適切な評価、薬局・薬剤師業務の対人業務の充実化
- ○ イノベーションの適切な評価や医薬品の安定供給の確保等
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視点4 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
- ○ 後発医薬品・バイオ後続品の使用促進
- ○ OTC類似薬等の薬剤給付の在り方の検討
- ○ 費用対効果評価制度の活用
- ○ 市場実勢価格を踏まえた適正な評価 ・ 医薬品、医療機器、検査等に関する、市場実勢価格を踏まえた適正な評価/効率的かつ有効・安全な利用体制の確保
- ○ 電子処方箋の活用や医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進
- ・ 重複投薬、ポリファーマシー、残薬、適正使用のための長期処方の在り方への対応 ・ 医師及び薬剤師の適切な連携による医薬品の効率的かつ安全で有効な使用の促進 ・ 医学的妥当性や経済性の視点も踏まえた処方の推進 ・ 電子処方箋の活用
- ○ 外来医療の機能分化と連携(再掲)
- ○ 医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価(再掲)
(考察)
今後の改定に向けたスケジュールは、12月中旬に改定の基本的な方向性が定める「基本方針」を決定し、年末の予算編成過程で診療報酬本体と薬価等の「改定率」が決定されます。
年明け1月に厚生労働大臣が中医協に対して「諮問」を行い、個別改定項目の具体的な点数設定や算定要件などが議論され、その審議結果を踏まえて2月に「答申」されます。そして、3月には告示や関連通知の発出、薬価改定は4月施行、診療報酬本体は6月施行が予定されています。
▼2026年度診療報酬改定のポイント整理

