データヘルス改革のポイント解説

医療情報編 2020.10月作成(11月一部追記、2021.04月一部修正)
 
本編では、菅政権が推進するデジタル化や規制改革の最新動向をはじめ、2017年から審議が進められているデータヘルス改革推進本部の動向などを踏まえ、「1.マイナンバーカードを起点とした政策の全貌」を確認したうえで、「2.コロナ禍の医療提供体制とデジタル化」、「3.マイナンバー制度における私たちの暮らし」、「4.データヘルス集中改革プランのポイント」を解説していきます。
 
データヘルス集中改革プランにおいて、2021年10月(3月から半年延期)に「オンライン資格確認等システム」が稼働となることは、医療機関等における患者情報の取扱いやネットワーク等のインフラ整備に関わる話題です。一方、患者としてもマイナンバーカードを健康保険証として使用する「マイナ受付」に関与し、個々人のライフスタイルに直結する側面がある点にも留意しなければなりません。
 
さらに、マイナンバー制度におけるマイナポータルは、医師や薬剤師等の国家資格等管理システムとの関係性を強めているため、他人事とはいえない状況に変わりつつあり、データヘルス改革の意義や役割の理解度をより高めていく必要性が増してきたといえるでしょう。
 
 
確認 Keyword

・患者の受診控え、呼吸器疾患患者の減少
・診療・検査医療機関の指定、検査キットの開発
・オンライン診療と0410対応の進展
・マイナンバーカード(ICチップ・電子証明書)
・マイナポータル(個々人のMyページ)
・マイキープラットフォーム(自治体サービス)
・被保険者番号の個人単位化(2桁枝番の付番)
・オンライン資格確認等システムの稼働
・電子処方箋・PHRサービスのポイント

 

1. マイナンバーカードを起点とした政策の全貌

まず注目して頂きたい点は、【①コロナ禍の医療提供体制】においては感染対策と非接触サービスの推進、【②マイナンバー制度】ではマイナポータルにおける個人の各種情報の管理、【③データヘルス集中改革プラン】ではオンライン資格確認等システムの稼働が進められている中、マイナンバーカードが「デジタル社会のパスポート」として存在感を増してきた点です。菅政権発足後、1ヵ月余りが経過して、デジタル化の推進に拍車がかかってきた印象ですが、皆様いかがでしょうか。

そして、「マイナンバーカードが健康保険証として使用される理由・背景」においても、この3つが密接に関与している点が押さえておきたいポイントだといえます。さらに、【①コロナ禍の医療提供体制】で顕在化された課題の克服、【②マイナンバー制度】を活用した健康管理における個人の行動変容を促すものとなり、これらが【③データヘルス集中改革プラン】の相乗効果となり、社会保障改革やデータヘルス改革における2040年のゴールである「健康寿命の延伸」が実現されていく訳です(下図)。
 
2021年3月に控えた「オンライン資格確認等システム」の導入に向けて、どこか腑に落ちず、様子見をしている方もいるかもしれません。もし、そうであれば、何のため誰のための改革であるかを理解しつつ、これらに関連する3つの助成金・補助金を活用することが、主体的に取り組む動機づけになるでしょう。
 
 
 
 

2. コロナ禍の医療提供体制とデジタル化

  • 相次ぐ医療機関のクラスターの発生・報道により、受診を控える(控えた)患者も少なくありません。しかしながら、長期処方や電話再診、さらに特例的な0410対応により、慢性疾患等の薬物療法が不可欠な患者の受診控えは最小限に留まっている状況です。依然として患者が戻らないという感覚の医療機関があれば、受診控えではなく、「患者が病気にかかっていない」あるいは「他の医療機関へ転院した」と考えるのが妥当かもしれません。

  • 患者が病気にかかっていない根拠としては、昨年同期の厚労省統計などを参照することで推察ができます。他の医療機関へ転院したと考える理由は、コロナ禍の状況を勘案してオンライン診療を取り入れるなど、患者受入を積極的に行っている医療機関もあるからです。
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  • 2020年10月より、各都道府県が「診療・検査医療機関」を指定し、その指定医療機関を中心に、新型コロナとインフルABの疑いがある発熱患者の検査・診療を実施する新たな医療提供体制がスタートしました。新たな体制では、「かかりつけ医」と「受診・相談センター」が相談窓口を担い、地域医師会などが感染を判別する「地域外来・検査センター」を立ち上げ、検査も診療も行うのが「診療・検査医療機関」となります。
    東京都では「診療・検査医療機関」を非公表、埼玉県では公表とするなど、各都道府県の医療資源や考え方により、体制整備や情報発信が変わりますので、よく地域動向を確認しておくことが肝要です(下図)。いずれにしても、地域医療の崩壊を防ぐ手立てとして、地域の動向に注視していくことが大切です。

  • そして、発熱患者への対応も期待されるのが、「オンライン診療および0410対応」です。かかりつけ医が発熱患者の診療をオンラインで行い、新型コロナかインフルABの疑いがあれば「診療・検査医療機関」を紹介するのがスタンダードになるかもしれません。
 
 
 
  • 3. マイナンバー制度における私たちの暮らし

    • マイナンバー制度は、直接的に医療機関・薬局が関わる話ではありません。しかしながら、住民票を持つ国民一人ひとりが関わる制度であり、データヘルス改革との関連性は押さえておきたいテーマだといえます。マイナンバー制度では、「マイナンバーカード」「マイナポータル」「マイキープラットフォーム」の3つの基盤・ツールが用いられています(下図)。

    • それぞれの詳細はここでは割愛しますが、「マイナポイント」や「マイナ受付」が導入される背景やPHR・PDS・情報銀行との関係、テクノロジーの進化により予見される環境変化を知っておくことで、時代の流れに即した準備ができるでしょう。
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  • なお、「マイナポータル」に関しては、医師や薬剤師など31職種の国資などの手続きのオンライン化が検討され、国家資格等管理システムの構築が審議されているため、医療従事者にとって他人事ではないという状況に変わってきた点に留意しなければなりません(下図)。
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    4. データヘルス集中改革プランのポイント

    • データヘルス集中改革プランは、コロナ禍において露呈された医療分野のデジタル化の遅れを取り戻すために、「オンライン資格確認等システム」「電子処方箋」「PHRサービス」の3つを重点的に整備する計画です。
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    「オンライン資格確認等システム」の稼働が2021年3月から10月に延期になったものの、この他は変わらずに進捗し、2022年夏までを照準にしたスケジュールを確認すると、既にマイナポータルで閲覧できる情報もあり、今後徐々に利用範囲が拡大されていく形となります。今のところ最終形は誰も分からず、テクノロジーの進化とともに機能とセキュリティが向上されて、医療機関や薬局の現場関係者、そして患者・国民が使いやすいものになっていくものと思います。菅政権の看板政策である「デジタル庁の創設」に関しては、マイナンバー制度やデータヘルス改革にも深く関与していくでしょう。
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 患者が健康保険証としてマイナンバーカードを使用するには、カードの取得と健康保険証として使用するための登録が必要であり、カード取得に対するインセンティブとして「マイナポイント事業」が進められ、着実に取得率が増加してきました。マイナンバーカードの普及は約2割に到達し、さらに取得率を高めるため、政府は健康保険証の新規発行を停止する方向で検討している状況です。発行停止により保険証を発行する医療保険者ではコスト削減が見込まれるため、早期に実施される可能性が高まっています。

他方、医療機関・薬局におけるマイナ受付対応としては、顔認証付きカードリーダーの無償支給とシステム改修の補助事業が進められ、11月初旬の顔認証付きカードリーダーの申込率は2割弱となっています。厚労省では2021年3月稼働時の6割導入に向けた切り札として改修費用を実費補助に変更(下図)し、大詰めを迎えてきた状況です(11月追記)。なお、予定通りに3月末に実費補助ゼロの特例措置は打ち切りとなっています。
 
 
 

本編の考察

今回は、データヘルス集中改革プランに関連するテーマのポイントを整理しました。マイナンバーカードを起点とした政策は、医療分野のみならず、金融や消費(キャッシュレス)にも直結すため、医療現場や取引業者のみならず、私たち自身・今後の暮らし方にもインパクトをもたらす大きな環境変化だといえるでしょう。とりわけ当事者の医療機関・薬局においては、患者の様々な健康・医療情報を取扱う重要性が増してきた点に留意していかなければなりません。以上、データヘルス時代に向けた環境変化に関する最新動向として、ご参考にして頂ければと思います。
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