2019年度 増税改定&増税対応のポイント整理(医療機関&薬局&介護)

医療&介護情報編 2019.7月作成時点
 
本編では、あと3ヶ月に迫った10月の消費税率10%への引き上げに関する公的情報をもとに、「1.増税改定の必要性と医療機関等へのインパクト」を確認し、「2.増税に伴う新たな仕組みと医療機関等への影響」に関するポイントを整理していきます。
 
増税改定自体はすべての医療機関等に関与しますが、新たに導入される軽減税率の会計処理や免税事業者の対応は千差万別であるため、顧問税理士に確認の上で対応する必要があります。ここでは、ポイントの列挙や概略の解説に過ぎないため、各公的サイトの情報をしっかりご参照ください。
 
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確認 Keyword

・消費税の損税・益税の問題解消
・薬価のマイナス改定
・軽減税率(8%)の導入
・プレミアム付き商品券事業は任意対応
・キャッシュレス消費者還元事業は対象外

 

1. 増税改定の必要性と医療機関等へのインパクト

  • はじめに、増税改定が必要とされている理由と増税改定の概略やポイントを確認します。
 
 
  • 消費税率引き上げ(増税)が必要な理由

  • 消費税は平成元年の導入時より、商品の販売やサービスの提供などの取引に対して、広く薄く公平に税金を課すという特徴を有し、最終消費者が税を負担して、それを課税事業者が預かって納税する間接税と位置付けられています。

  • 社会保障・税一体改革の最終章を迎える10月の消費税率10%への引き上げは、高齢化で増え続ける年金や医療・介護、子育て支援の社会保障4経費に充当する主旨が明確な増税です。現状(2018年度予算)では、社会保障4経費の歳入(税収)は歳出の半分以下(下図では不足分を「スキマ」と表現)であり、増税はこの不均衡な歳出入のバランスを整え、財政健全化に向けて赤字国債の補填を是正する目的があります。今後も社会保障4経費が高騰していけば、今回の10%への増税は通過点となってしまうでしょう。
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    10月の臨時増税改定の概況と医療機関等へのインパクト

臨時改定は算定要件の見直しがなく、現場への影響や経営的なインパクトはありませんが、薬価は実勢価改定の影響により医療費ベース▲0.51%(=0.42%-0.93%)、薬価ベースでは▲2.4%程度のマイナス改定となることから、薬剤費のウェートが高い院内処方先や薬局において収入減につながる点に留意しなければなりません。介護事業者においては「介護職員等特定処遇改善加算」が創設されるため、加算取得に向けた準備が重要です。
 
この他、増税対応の一環として、取得価額500万円以上の高額医療用機器等を購入してその事業に使用した場合、通常の減価償却費に加え、その医療用機器等の取得価額の12%を特別償却費として早期費用化できる措置が、2019年度税制改正において盛り込まれた点は該当先にとって朗報といえます。
 

そして、医療機関や薬局において増税改定以上に注意しなければならないことは、増税影響の緩和や消費活性化を目論んだ新たな仕組みが導入される点です。
 
「軽減税率」は対象品目の取扱いがある場合や免税事業者の会計処理に関与しますので、該当するか否かは個々の事業者により異なるため、特に注意しなければなりません。「プレミアム付き商品券事業」は保険診療等にも関与しますが、対応は任意であり地域性を考慮して判断する必要があります。「キャッシュレス・消費者還元事業」は医療機関等が対象外となったため基本的に関与しません(下表)。それでは、これらの新たな仕組みの全体像を踏まえて、次ページ以降、各ポイントを確認していきましょう。
 
 

 

2. 増税に伴う新たな仕組みと医療機関等への影響

  • 医療機関等において、増税改定以上に注意しなければならないことは、取扱い品目により対応の仕方が異なる「軽減税率」という新たな仕組みなどが導入される点です。その他、地域性のある「プレミアム付き商品券事業」や生活者に関わる「キャッシュレス・消費者還元事業」に関するポイントも確認していきたいと思います。
 
 
  • 「軽減税率導入」に関する医療機関等の対応

  • 医療機関等では、社会保険診療等の非課税取引(保険収入)以外に、自由診療や予防接種、健診、一般用医薬品、飲食料品、関連商品等の販売を行い「保険外収入」が伴うケースがあります。こうした「保険外収入」に係る課税取引がある場合、10月以降、社会保険診療等の非課税取引に加えて、「標準税率(10%)」と「軽減税率(8%)」が混在する形に変わることから、対象品目の取扱いがあれば会計処理の対策が必要です。制度の詳細は、政府オンライン専用ページをご参照ください。

  • 「軽減税率」の対象品目は「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約に基づく週2 回以上発行される新聞」と限定的であるものの、「飲食料品」の対象範囲は広く、やや複雑になっていますので、その区分の体系図や類似品を確認しておきましょう(下図)。
  • なお、老人ホーム等における食事の提供(1食640円以下)やイートインに関する疑義は、国税庁のQ&Aがとても参考にあります。

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  • 例えば、複数税率の対象品目の販売があれば「区分記載請求書等」に対応したレジや受発注システムの導入や改修を検討しなければなりません。機種の選定においては税率対応のみならず、政府が推進するマイナンバーカードの利用促進による「自治体ポイント」等との仕様に係る互換性や拡張性を考慮しつつ、軽減税率対策補助金の活用も検討材料になります。
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  • また、「軽減税率」の対象となる勘定科目としては、定期購読の新聞代は新聞図書費、飲食料品は贈答用の食品や会議用の茶菓・弁当などが交際費や会議費または福利厚生費等が含まれるため、ほぼ全ての事業者に関与するものとなっている点に注意しなければなりません。ここでは「軽減税率」が生活者だけでなく、該当品を取扱う事業所の経費処理にも関わる点を押さえ、今後の影響や対応法等については実務に携わる顧問税理士へ確認しておくとよいでしょう。

  • なお、「保険外収入」のある医療機関等において「軽減税率」の対象品目の取引がある場合には、複数税率に対応した「区分記載請求書等」の発行や経理処理が必要になります。2019年10月に導入される「区分記載請求書等保存方式」において、課税事業者は仕入税額控除をする要件としてその対応が必須となり、免税事業者(課税取引1,000万円未満)が課税事業者と取引(課税事業者による免税事業者からの仕入れ)する場合に「区分記載請求書等」の発行が求められるケースもあります。

  • そして、2023年10月1日には「区分記載請求書等保存方式」の進化版として「適格請求書等保存方式(インボイス)」が導入され、免税事業者と課税事業者の取引が明確に線引きされる形になります。この線引きにより、課税事業者がインボイスのない免税事業者と取引(購入や仕入れなど)すると仕入税額控除ができず(下図)、割高になるうえ経理の事務量が増えることから、免税事業者との取引が敬遠されることが懸念されています。
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この激変緩和措置として一定期間の経過措置がありますが、2029年10月に措置が終了となります。但し、これら区分経理に係る変更は少額取引に対する例外措置もあり、具体的な取引額等による判断が必要です。インボイスの導入は、消費者が負担した消費税の一部が納税されずに事業者の手元に残る益税問題の解消と位置付けられています。免税事業者に該当する場合、経営者や税務担当者は変更点を顧問税理士に確認し、対応していく必要があります。
 
 
 
 

「プレミアム付き商品券事業」における医療機関等の対応

プレミアム付き商品券事業(以下、商品券に略)は、今回の消費税率の引き上げが低所得者・子育て世帯の消費に与える影響を緩和するとともに、地域における消費を喚起・下支えする目的があり、その商品券が購入できる対象は低所得者・子育て世帯主向けに限定されました。
 
商品券は、金券として現金と同様の機能を果たすものとして、医療や介護の自己負担の支払いにも充てることができるルール(自治体の判断により対象外とすることも可)となりました。これにより、医療機関や薬局が商品券を取扱う場合には当該市町村の公募に申し込む必要(任意)があります。導入をお考えの際には、これからの当該市町村等の地域情報を確認していきましょう。

商品券の券面額およびプレミアム補助額は、住民税非課税者は券面額2.5万円、販売額2万円でプレミアム補助額5千円(割引率20%)、子育て世帯は券面額の購入を学齢3歳未満の子(2016.4.2~2019.9.30までの間に生まれた子)の数まで購入可とされました(下図)。
期間は10月1日から翌年3月31日まで市町村等の定める期間において使用可能とし、購入希望者は事前申請して、市町村等が順次審査を行うこととなり、申請の受付期限は11月頃までと予定されています。商品券はお釣りが出ないルールとされ、例えば900円の自己負担の場合には、商品券1枚と現金400円で会計する形となります。
 
 
 

「キャッシュレス消費者還元・その他」に対する医療機関等の対応

キャッシュレス・消費者還元事業は、「保険医療機関、保険薬局、介護サービス事業者、社会福祉事業」等は対象外(下図)となり、特に会計上の処理や実務の準備は必要ありませんが、生活者として押さえておきたい新たな仕組みだといえるでしょう。
 
 
この事業は、増税に伴う駆け込みや反動減に対応した需要平準化対策であり、中小・小規模事業者におけるキャッシュレス決済を促進する狙いがあります。該当店舗などにおいて消費者がクレジットカードやデビットカード、電子マネー、QRコードなどの電子的決済手段で購入した場合に5%が還元される仕組みです。期間は10月より9ヶ月間(2020年6月まで)と限定的であり、要件を満たした中小・小規模事業者は登録を行うことで、加盟店手数料や端末導入費用の補助・軽減といった支援が受けられます。

この他、ポイント還元等の支援策を講じた後の消費活性化策として、マイキープラットフォームを活用した「自治体ポイント」の付与という支援が予定されています。今年度予算が119.3億円計上されるなど、マイナンバーカードの健康保険証利用とともに、カードの普及促進の後押しとして注目される基盤整備である点を押さえておきましょう。
 
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本編の考察

今回は、10月に控えた消費増税改定および増税における新たな仕組みに対する医療機関等の影響とインパクトを整理しました。
消費増税に伴う軽減税率などの導入は、軽減税率の対象品目の取扱いや課税取引の販売額などにより対応は千差万別になるため、個別の会計処理や免税事業者としての対応は顧問税理士等の判断をご確認いただく必要があります。以上、増税対応に向けた取り組み課題、対応や準備に係る最新情報としてご参考にして頂ければと思います。
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