IT導入補助金の活用ポイントとIT導入時の確認ポイント(医療&介護)

医療&介護情報編 2019.6月作成時点
 
本編では、IT導入補助金に関するポイントとして、「1.中小企業等が活用できるIT導入補助金の概要」を整理し、「2.医療分野におけるIT導入の必要性」「3.介護分野におけるIT導入の必要性」「4.IT導入時に確認すべきポイント」を確認していきます。
 
ここでは、ポイントの列挙や補助金の概略の解説に過ぎないため、実際に導入を検討される際には「IT導入補助金2019(専用サイト)」をしっかりご参照ください。
 
  •  
確認 Keyword

・導入コンサル費も含まれる珍しいタイプの補助金

・大幅な増額により業務改善の活用に期待できる補助金

・ITは働き方改革の課題解決の補助的な役割を果たすツール

・万人がだれでも活用できるのがITツールの特徴

・ITツールの選定は生産性向上に寄与するかが重要な決め手

 

1. 中小企業等が活用できるIT導入補助金の概要

  • 2017年からスタートした経産省管轄のIT導入補助金(補助事業)は、業務効率化や生産性向上を目的としたIT活用を推進する政府の重点施策として、今期3年目を迎えました。
    今期の補助額は前期よりも大幅な増額となり、下限額40万円、上限額450万円、補助率1/2と設定されました(下図)。
    IT導入補助金の対象となるITツールは、事務局の審査・登録による厳選されたパッケージソフトやクラウドサービスなどがあり、導入時にはIT導入支援事業者(ITベンダー)による導入コンサルティング費(役務)も含まれる珍しいタイプの補助金です。ただし、ハードウェアやリース料金、申請代行費などの経費は補助対象外となっています。
     
     

    補助金の対象者は中小企業・小規模事業者等に限定され、医療法人や社会福祉法人の場合は「従業員数300名以下」、この他の医療や介護の中小企業・個人事業主の場合は中小企業基本法に基づくサービス業の区分における「資本金5千万円以下従業員数100名以下」となっています。詳細の区分はこちらをご確認ください。
     
    これまで過去2回の補助事業において、中小病院や介護事業所等の活用実例も多くありました(下図)。今期においては補助金が大幅な増額となったことで、より高度なツールの導入やシステムの改修(リプレース)にも対応しているため、今回は特に業務改善の活用に期待できる補助金となっています。
     
     
     

 

2. 医療分野におけるIT導入の必要性

  • 厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会の報告書」では、2024年4月から適用する時間外労働時間の上限をA・B・Cの3つの水準に設計しました。
  •  
  • 【A水準】では罰則付き時間外労働の上限を年間960時間・月100時間未満とし、【B水準】と【C水準】は特例として年間1860時間以下・月100時間未満に設定(いずれも休日労働含む)しました。【B水準】は地域医療の確保のためにやむを得ず適用する地域医療確保暫定特例水準(将来的には削除)であり、【C水準】は初期研修医などが一定期間、集中的に技能向上のための診療が必要な場合の特例と位置付け、どちらも医療機関を特定する形となります。

  • 3つの水準において共通する単月100時間の時間外労働の上限は、すでに4月1日から一般労働者に適用されている臨時的な場合と同じ例外的な基準です。単月100時間の時間外労働は1日4時間以上の残業が続く過労死ラインであり、労働安全衛生法上の義務付けがある面接指導が義務づけられています。
  • また、【B水準】と【C水準】では最低限必要な睡眠を確保するため、勤務間インターバルの確保や連続勤務時間制限などの追加的健康確保措置も義務付けられました。具体的には「連続勤務時間」は28時間まで、「勤務間インターバル」は9時間(当直時は18 時間)と設定され、時間外労働時間が960時間を超える初期研修医に対しては1日ごとに確実に疲労回復させる観点から「連続勤務時間」は28時間ではなく15時間に制限されています。

  • 医療機関では、とりわけ「勤務医の時間外労働の上限時間」の設定が注目されてきましたが、労働時間短縮に向けて、2024年4月までの約5年間で計画的に取り組みを進めていく必要があります。過酷な若手勤務医の労働環境の改善が期待される反面、その分の労働力をどう補うかが現実的な課題となっています。
  •  
  • 今回の働き方改革における労働時間の適正化は勤務医の健康を守り、患者への医療安全を担保するために欠かせない施策である本質を理解しつつ、勤務医の時間外労働が「医療提供の量」に関わるため、勤務医を抱える医療機関のみならず地域医療にも影響を及ぼす点に留意しなければなりません。
    その影響とは、病院経営では勤務医の残業分相当の労働力を補う「医師の人材確保(=人件費増)」が関与し、人材を補えない場合には医療提供体制に関わる「病床機能の見直し及び病床削減(=収入減)」が関与することになります。
  •  
  • ポイントを整理すると、医師の働き方改革は労務管理だけの問題ではなく、勤務医本人の働き方や医療機関の労働力確保はもとより、地域全体の医療提供体制に影響をもたらし、地域住民やすべての医療関係者に関与する点を再認識しなければなりません。そして、働き方改革の実践と地域医療構想の実現をいかに両立させていくかが、各医療機関の共通課題だといえるでしょう。その補助的な役割を果たすツールがITであり、各課題に応じた機器の選定がポイントになります。
     
 
  • 3. 介護分野におけるIT導入の必要性

  • 厚労省では、介護サービスにおける生産性向上が「介護の価値を高める」ことにつながると考え、多くの介護事業者がその取り組みを推進できるよう「介護分野における生産性向上ガイドライン(GL)」を策定しました。GLに基づく業務の継続的な改善を進めることは「介護サービスの質の向上」と「人材の定着・確保」に不可欠であり、働く人のモチベーションの向上や楽しい職場・働きやすい職場づくりを実践できると期待されています(下図)。
  •  
  •  
  • 高齢化の進展により、介護分野のマンパワー不足は医療よりも深刻です。政府による外国人労働の緩和の恩恵を受けられるのは一部の施設や事業所に過ぎませんが、IT導入はそれよりもハードルが低く、万人がだれでも活用できるのがITツールの特徴だといえます。ITツールに抵抗感を感じている方も少なくありませんが、現状に何か不備が生じていれば、IT導入はそれを改善するキッカケになるでしょう。
  •  
  • GLは、生産性向上の取り組み経験がない事業所でも取り組みやすくする道案内と位置付けられ、「業務改善の手引き=教科書」として生産性向上に取り組むためのノウハウを普及させる役割があります。生産性向上の取り組み経験がない事業所において、何から始めて良いかが分からないことも多々あるかと思いますが、手軽に取り組みやすいよう、「職場環境の整備」をはじめ、「業務の明確化と役割分担」、「記録・報告様式や情報共有の工夫」など、7つのステップにおける取り組み方が整理されています。
 
医療分野にも共通して言えることですが、現状の確認をしたうえで、業務効率化を図れるコトやモノが見つかれば、IT導入による恩恵の余地があるといえます。現状が分からない状態では目的地にたどり着くことはできないため、繰り返しになりますが、まずはしっかりと客観的な現状確認を行うことが不可欠です。
 
 
 
  • 4. IT導入時に確認すべきポイント

  • ITツールの種類は多岐に亘り、①顧客対応・販売支援、②決裁・債権債務・資金回収管理、③調達・供給・在庫・物流、④人材配置、⑤業務固有プロセス(実行系)、⑥業務固有プロセス(支援系)、⑦会計・財務・資産・経営、⑧総務・人事・給与・労務、⑨自動化・分析、⑩汎用―といった業務プロセスに係るソフトウェアが該当しています。
  •  
  • ITツール選定や各種申請にあたり、ITベンダーから計画書の策定や申請支援等の導入コンサルティングが受けられる点を踏まえれば、単なる売買関係ではなく、顔の見えるパートナーシップを築き、継続的なフォローの実施が期待できる業者の選定がポイントになります。申請時には、ツール導入の効果として、3年後の伸び率が1.0%以上、4年後の伸び率が1.5%以上、5年後の伸び率が2.0%以上となる生産性向上を目標とした事業計画の策定(事業実施効果報告は2020年から2024年までの5回)や、生産性に係る情報の見える化などが求められています。ITツールの選定においては補助金ありきではなく、生産性向上に寄与するかが重要な決め手になるでしょう。

  • ITツールの導入はゴールではなく新たなスタートであり、日頃から改善意識を持って利用し、機器を使いこなすには時間をかけた教育が不可欠です。そして、IT導入において留意すべき点は、機器やツール自体がすべての問題を解決してくれる訳ではなく、それを使いこなすスタッフによる継続的なマネジメントがなければ、効率アップできないことを忘れてはなりません。

  • また、ツール導入自体がスタッフのストレスになってしまっては本末転倒です。組織で導入を決定する際には実働に携わるスタッフの意見を収集し、導入に向けた検討~準備~運用のプロセスの中で、組織全体での話し合いを根付かせていくことができれば、スタッフにも患者や利用者にとっても風通しの良い快適な環境へと近づけていけるはずです。こうした一連の取り組みは働き方改革を遂行していくキッカケとして有用であり、スタッフの働き方も改善する一助となれば、とても有益に補助金を活用することができるでしょう。

  • なお、補助金活用においては時限的な申請タイミングと財源(予算額)が限られているケースが多く、今期のA類型の一次募集は既に締め切られ、B類型の一次募集の期限が迫り、次に7月中旬から二次募集が始まりますので、早期の判断が必要とされている点に注意しなければなりません。
 
  •  

本編の考察

今回は、中小企業等が活用しやすいIT導入補助金のポイントを整理しました。興味があれば、ツールの選択においては身近な類似の改善事例が参考になるため、まずはレセコン関係のITベンダーに相談してみるとよいでしょう。以上、環境変化への対応策の一助として、ご参考にして頂ければ幸いです。
レポートの活用について
このレポートの著作権は当社に帰属します。特に定性情報に関して、許可のない無断使用および転用を固く禁じております(サイトリンクも厳禁)。
 
貴社サイトへの転用(例えば、ヘルスケア情報の付加価値を高める資材)や、営業のドアノックツール(例えば、営業マンが医療機関等を開拓するための資材)、院内の教育ツール(例えば、最新のヘルスケア情報を学習する資材)などとして、ご活用を希望される方は下記のお問い合わせより別途ご連絡ください。
 
バックナンバーはこちらよりご確認いただけます。
お問い合わせ