保健事業と介護予防の一体的な実施に関する動向

介護情報編 2019.11月作成時点
 
本編では、厚労省が9月27日に公表した「高齢者の保健事業と介護予防一体的な実施の推進に向けたプログラム検討のための実務者検討班 報告書」を参考に、「1.健康寿命の延伸に向けたフレイル対策と現状の課題」を確認し、「2.市町村における保健事業と介護予防の一体的な実施」について整理していきます。

保健事業と介護予防の一体的な実施は、令和2(2020)年4月から市町村等が本格的に開始できるよう準備が進められています。介護事業者では直接関与しない場合であっても、高齢者に関する押さえておきたい話題になりますので、少しでもご参考にして頂ければと思います。
 
確認 Keyword

・高齢者の健康状態の特性とフレイル
・KDBを活用したデータ解析
・介護予防につながる通いの場
・互助に関与した生活支援サービス
・高齢者を支える互助の基盤づくり

 

1. 健康寿命の延伸に向けたフレイル対策と現状の課題

高齢者特有の健康障害とその健康課題

  • 高齢者は、複数の慢性疾患の罹患に加え、要介護状態に至る前段階であっても身体的な脆弱性のみならず、精神・心理的、社会的な脆弱性といった多様な課題と不安を抱えやすく、いわゆるフレイル状態になりやすい傾向があります(下図)。そこで、高齢者の「保健事業」と「介護予防」の実施においては、その特性を踏まえた効果的かつ効率的で、高齢者一人ひとりの状況に応じたきめ細かな対応を行うことが必要とされています。
     
     
     
    • 保健事業と介護予防の現状、一体的な実施が必要な理由

    • 平成20(2008)年度からメタボリックシンドロームに着目した特定健診・保健指導が健保組合や協会けんぽ、国民健康保険における40歳から74歳までの加入者を対象に実施され、「生活習慣病対策」として確実に広く定着してきました。
      これに対し、75歳以上の後期高齢者が加入する後期高齢者医療制度では「保健事業」が推進されつつ、介護保険制度においては「介護予防」が組み込まれ、各々においてフレイルに着目した疾病予防が実施されてきました。
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      高齢者が「疾病予防・重症化予防」と「生活機能の維持」の両面にわたるニーズを有しているにも関わらず、医療保険における「保健事業」は後期高齢者医療広域連合が主体となって実施し、介護保険における「介護予防」の取り組みは市町村が主体となっている各制度の縦割りにより、健康状況や生活機能の課題に一体的に対応できていない点が、現行制度の課題として浮き彫りになっています(下図)。

     

    こうした課題を改善するため、6月21日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2019では「高齢者一人ひとりに対し、フレイル等の心身の多様な課題に対応したきめ細やかな保健事業を行うため、運動、口腔、栄養、社会参加等の観点から市町村における保健事業と介護予防の一体的な実施を推進する」と明示されました。これを受けて、令和2(2020)年4月から市町村等が、「保健事業」と「介護予防」の一体的な実施を本格的に行えるよう準備が進められています。介護事業者においては、介護予防(総合事業)の取り組みが複合的なアプローチへと見直しになる点に留意しましょう。
     
     

     

     

    2. 市町村における保健事業と介護予防の一体的な実施

    • 市町村における一体的な実施のイメージ

    • 現在、令和2(2020)年4月からの市町村による「保健事業」と「介護予防」の一体的な実施の仕組みの構築に向けた準備が進められています。保健事業では「疾病予防・重症化予防」、介護予防では「生活機能の改善」を根幹に据えて、高齢者の医療・介護データの解析を行いながら、市町村が一体的に実施していく形が想定されています(下図)。
       

       

      保健事業と介護予防の一体的な実施のポイントを確認すると、まず「保健事業」では、健康状態や生活機能、生活背景等の個人差に応じた対応を考慮し、対象者の階層化とその階層に応じた個別対応が不可欠になります。そのために必要とされるのが、これまでに確立できなかったデータ解析に基づくサポート体制です。
      保健事業と介護予防の一体的な実施では、有用なKDB(国保データベース)を活用したターゲットを絞り込んだ重点的な実施が見込まれるなど、データ解析に基づく科学的介護やデータヘルスに関与している点も押さえておきたい話題になります。新たな質問票が採用となり、その変更とともに電子的な標準様式等の仕様へのシステム改修が行われ、個々の高齢者へのサポート強化だけでなく、ビッグデータの解析による事業全体の底上げが期待されています。

      次に、「介護予防」のポイントとしては、高齢者の「通いの場」を拠点の中心に据えて、疾病予防・重症化予防に係る「保健事業」と、運動、口腔、栄養等のフレイル対策を含む「介護予防」の一体的な実施により予防・健康づくりを推進していく事業イメージが打ち出されています(下図)。市町村が「通いの場」の立ち上げや運営支援、拠点の拡大を担当し、地域医師会等との連携を強化し、必要な受診勧奨や保健指導に関する情報共有などをする構想です。「通いの場」を拡大することは高齢者の生きがいや役割を付与することや、一層の効果的な健康づくり・介護予防につなげることが期待されています。
       
       
      そして、保健事業と介護予防の一体的な実施を実現する高齢者のメリットは、要介護に要していた時間やコストが低減できるとともに、個々人の状態に合わせたサポートによりQOLの向上が見込まれることです。これらの取り組みは、地域包括ケアと連携し、生活支援とともに推進することにより、フレイルのリスクがある高齢者に限らず、病気を抱えて地域で暮らす在宅療養者まで、様々な対象者にアプローチができ、健康管理を支援することにつながりやすい特徴があります。
       
       
       
       
      • 高齢者の通いの場の設置、そして互助への発展

      • 健康づくり・フレイル予防のためには、より多くの高齢者に「通いの場」に来てもらうことが重要であり、「通いの場」の整備費用は平成30(2018)年度から実施されている「インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)」の対象として、各地での整備が促進されている状況です。平成31(2019)年3月に厚労省が策定した「これからの地域づくり戦略」では、地域の高齢者に「通いの場」などに集ってもらうための情報共有の一環として、「軽い体操」をはじめ、「脳の健康教室」や「もの作り教室」など、各地で様々な工夫を施した取り組みが掲載されており、参考にすることができます。

      • ここでポイントになるのは、「通いの場」が地域の高齢者を支える「互助」の基盤づくりに発展していくことが期待されている点です。介護が必要となっても可能な限り住み慣れた地域での生活を可能とする地域包括ケアシステムの【5つの要素】の活用により、高齢者の生活基盤となる【住まい】を中心に、オフィシャルな【医療】や【介護】のサービス提供だけなく、【予防】につながる「通いの場」、そして身近な地域住民の助け合い(互助)として「ごみの分別」「電球の取り替え」「病院への付き添い」「買い物支援」などの【生活支援】が望まれ、さらなる深化が必要とされています(下図)。
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        「通いの場」を拠点に、運動・口腔・栄養等のフレイル対策を含む疾病予防・重症化予防に係る「保健事業」と「介護予防」の一体的な実施による効果的な健康づくりにつながることで、健康寿命のさらなる延伸が望まれています。そして、「互助」の取り組みに対する支援は自治体が主体となるものの、高齢者と接点の多い介護事業所では、地域ケア会議への積極的な参加はもちろんのこと、様々な地域資源をコーディネートしたり、あるいは保険外サービスの展開より、地域包括ケアシステムの深化に寄与していくことができ、高齢者のQOL向上においても重要な役割を果たすことができるでしょう。
       
       
       
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      本編の考察

      高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関するポイントを整理しました。保健事業と介護予防に関与しない介護事業者であっても、互助に関与する生活支援サービスは、保険外サービスとして利用者のニーズを踏まえながら展開していくことが大切です。以上、高齢者および利用者にまつわる最新の動向として、今後の取り組みなどにお役立て頂ければ幸いです。
     
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