2026年度改定に向けた課題整理「個別事項その8 小児・周産期医療、感染症対策、 医療安全、災害医療」
■ 小児・周産期医療
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【MFICU(母体・胎児集中治療室)の機能分化と評価】 ハイリスク妊産婦(切迫早産、妊娠高血圧症候群など)の受入実績に応じた評価が適切になされているか。MFICUから一般病棟への転棟、あるいは地域医療機関への逆紹介がスムーズに行われているか(長期滞在の是正)。
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【ハイリスク分娩管理と人員配置】 分娩取扱施設の減少に伴い、集約化された施設での負担(医師・助産師の配置)に見合った評価になっているか。「院内助産」や「助産師外来」の活用状況と、医師とのタスクシェアの推進。
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【妊産婦のメンタルヘルスケア・社会的ハイリスクへの対応】 精神疾患を合併する妊産婦や、社会的養護が必要なケース(特定妊婦等)に対する多職種連携(ソーシャルワーカー、精神科医との連携)の評価。産後うつ予防や育児支援に向けた、入院中からの早期介入の在り方。
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【無痛分娩の安全性と体制整備】 無痛分娩の実施件数が増加する中、麻酔科医の関与や急変時対応マニュアルの整備など、安全管理体制に対する評価の検討。
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【NICU(新生児特定集中治療室)・GCU(新生児治療回復室)の長期入院と在宅移行】 ICU/GCUにおける長期入院児(特に医療的ケア児)の実態把握。退院に向けた家族への指導、後方病院(地域小児科等)や訪問看護ステーションとの連携に対する評価の在り方。「重症児受入体制」の強化と、空床確保等のコストに対する考え方。
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【小児入院医療管理料と「保育士・HPS」の評価】 小児病棟における保育士(HPS: ホスピタル・プレイ・スペシャリスト含む)の配置が、患児の療養環境や家族の負担軽減に与える効果。現行の評価(加算等)が配置コストに見合っているか、配置要件の緩和や評価の引き上げが必要か。
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【移行期医療(トランジショナルケア)の推進】 小児慢性特定疾病などを持つ患者が、成人診療科へスムーズに移行するための支援体制(自立支援、多職種カンファレンス)の評価。成人科での受入促進に向けたインセンティブ。
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【PICU(小児集中治療室)のアクセスと機能】 PICUへの搬送体制(ドクターカー、ドクターヘリ等)と、広域連携の実態。小児救急におけるトリアージ機能や、夜間休日診療の負担軽減策。
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【医療資源の集約化とアクセスの確保】 分娩施設や小児入院施設の集約化が進む中で、遠方の患者に対するアクセス確保や、セミオープンシステム(妊婦健診は診療所、分娩は病院)の活用状況。情報通信機器(オンライン診療等)を用いたフォローアップの可能性。
■ 感染症対策
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【連携の質の確保と負担のバランス】 「感染対策向上加算1」の医療機関(地域の中核病院)と、「加算2・3」の医療機関(診療所・中小病院)との連携カンファレンスについて、「形式的な開催になっていないか」「負担が大きすぎないか」が論点。対面開催の必須要件の緩和や、ICT(Web会議等)の活用、メール等による相談体制の評価などが検討課題。
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【小規模医療機関の参画促進】 診療所や中小病院がより容易に連携ネットワークに参加できるよう、要件の見直し(ハードルを下げるか、インセンティブを強化するか)を検討。
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【平時からの連携構築】 医療機関が近隣の高齢者施設(特養・老健等)に対して、平時から感染管理の指導・助言を行うことへの評価をどう深めるか。施設内で感染症(COVID-19、インフルエンザ、尿路感染症等)が発生した際の「往診」や「入院受け入れ」の体制が実質的に機能しているかが重要な論点。
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【新興感染症発生時の対応】 改正感染症法に基づく「協定締結医療機関」としての役割と、診療報酬上の評価の整合性をどう図るか。
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【データの利活用】 感染対策向上加算の要件となっている「J-SIPHE(感染対策連携共通プラットフォーム)」や「JANIS(院内感染対策サーベイランス)」への参加について、単に参加するだけでなく「自施設のデータ分析・改善に活用しているか」が課題。
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【入力負担の軽減】 現場の入力負担が大きいため、システム連携による自動化や入力項目の精査(簡素化)が必要ではないかという点。
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【抗菌薬適正使用の評価】 広域抗菌薬(カルバペネム系等)の使用比率や、アクセス(Access)薬剤の使用促進など、プロセス指標だけでなくアウトカム(結果)を診療報酬でどう評価するか。「抗菌薬適正使用支援加算」の算定要件や対象患者の拡大・見直し。
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【特例からの移行】 コロナ禍での「特例的な加算」に頼るのではなく、平時の診療報酬体系の中で、有事(パンデミック)に即応できる「予備力」をどう評価し維持するか。PPE(個人防護具)の備蓄やゾーニング訓練などの維持コストへの評価。
■ 医療安全
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【「医療安全対策加算1」の取得義務化の検討】 特定機能病院やICU等の高度急性期機能を持つ病院に対し、専従の安全管理者を配置する「医療安全対策加算1」の届出を事実上の要件(または強く推奨)とする議論。
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【リスクマネージャーの配置】 高リスクな医療を提供する場における、専任・専従のリスクマネージャーの実質的な活動評価。
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【連携の強化】 加算1(基幹病院)と加算2(中小病院)の医療機関間での「相互チェック」や「共同カンファレンス」の評価見直し。
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【ピアレビューの推進】 外部の目を入れた安全監査や、死亡事例・重大事例発生時の外部支援体制の構築。
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【「患者サポート体制充実加算」の要件見直し】 単に窓口があるだけでなく、定期的な相談状況の分析や、職員への接遇・対話研修の実施状況をより重視する可能性。
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【事故後の対応】 医療事故発生時の初期対応や、患者・家族への説明プロセス(Informed Consent / Disclosure)の質的評価。
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【BCP(事業継続計画)の策定・訓練】 サイバー攻撃を想定したBCP策定や、定期的な訓練の実施を、医療安全対策加算や入院基本料の要件(または施設基準)としてより厳格に求める。
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【診療録管理体制加算との連動】 医療DX推進とセットで、セキュリティ対策の実施状況を評価に反映させる。
■ 災害医療
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【診療所における事業継続計画(BCP)の策定促進】 診療所が災害発生時に医療提供を継続できるよう、BCP策定の推進や、それに関連する取り組みを診療報酬でどのように評価するかが検討。
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【災害時における医療提供体制の維持・確保】 災害時における医療機関間の連携や役割分担をさらに強化・明確化するための評価。災害時に求められる医薬品や医療機器の備蓄、電源・通信手段の確保など、BCPの実効性を高めるための取り組みに対する評価。
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【経営環境の変化への対応(災害対応の基盤)】 医療機関の安定した経営基盤を確保することが、結果的に災害対応力の強化につながるため、入院基本料などの見直しが必要。

