2026年度改定に向けた課題整理「入院医療その1」
■ 急性期(高度急性期・急性期)
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▼課題
【高い人的負担】 重症患者さんが多いため、医師や看護師の配置、高度な医療設備、密度の高い診療が求められ、医療従事者への負担が非常に大きいです。
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【在宅復帰支援の必要性】 入院期間が短くなる傾向にあるため、退院後の生活を見据えた適切な在宅復帰支援が不可欠です。
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【高度な医療調整】 痛み管理や集中治療、命に関わる救命処置など、高度な調整能力が求められます。
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▼ポイント
【効率的な医療提供】 「急性期充実体制加算」を届け出ている病院は、そうでない病院に比べて平均在院日数が短く、効率的な医療提供ができています。
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【多職種連携と業務軽減】 医師や看護師だけでなく、多職種が連携することや、医師事務作業補助者などを配置して業務負担を軽減することが重要です。
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【適切な評価制度】 患者さんの重症度や看護の必要度を適切に評価するための診療報酬制度の見直しが進んでいます。
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■ 包括期(回復期+地域包括ケア)
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▼課題
【人員配置と機能転換】 急性期からの移行に伴い、在宅復帰に向けたリハビリやケアが中心となるため、適切な人員配置や病院機能の転換が必要になります。
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【地域連携の維持】 地域包括ケア病棟の届出数は増えていますが、一部の病院では救急患者の受け入れや在宅支援の基準を十分に満たせていないことがあります。
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【広範な地域連携】 救急対応、訪問看護、介護連携など、地域全体と連携する体制の構築が求められます。
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▼ポイント
【在宅復帰率の向上】 在宅復帰を促すため、入院41日以降の加算や訪問看護の実績が診療報酬で評価されるようになりました。
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【スムーズな移行支援】 入退棟支援部門の設置が必須となり、急性期から回復期への移行がよりスムーズになるよう制度改革が実施されています。
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【DPC制度での明確化】 DPC制度(診断群分類別包括評価)において、病床機能が「包括期」として明確化され、2040年に向けた体制整備が検討されています。
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■ 慢性期
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▼課題
【長期入院による資源圧迫】 入院期間が長くなる傾向があり、医療資源(ベッドやスタッフ)を圧迫し、医療費の高騰につながる可能性があります。
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【在宅・施設ケアの推進】 医療費の抑制と患者さんのQOL向上のため、在宅や施設でのケアへの移行が課題となっています。
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【専門性と対応力】 重度障害者や難病患者さんへの対応も必要となるため、スタッフの専門性と幅広い対応力が求められます。
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▼ポイント
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【ニーズの高さ】 療養病床の在院日数や利用率は減少傾向にありますが、慢性期医療へのニーズは依然として高いです。
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【地域移行の促進】 地域への移行や在宅療養を促す取り組みが進められており、包括期での適切な「つなぎ」が重要になります。
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【病床機能の精緻化】 病床機能の分類がより細かくなることで、慢性期医療へのリソース重点化や地域包括ケアとの連携強化が求められています。
■ クロスフェーズの共通ポイント
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▼3つの医療段階全体に共通する課題
【評価制度の整備】 患者さんの重症度や看護必要度の客観的な評価、そして在院日数や在宅復帰率に応じた診療報酬制度の導入が、各病床機能の適切な運営を促します。
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【多職種連携と人材配置】 医師事務作業補助者の導入や、訪問看護師、地域包括ケアスタッフの充実など、多職種が連携し、適切な人材を配置することが業務効率化と質の高い医療提供につながります。
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【地域との連携強化】 救急患者の受け入れから在宅への移行、関連施設との連携まで、地域全体で医療を提供する体制を構築することが不可欠です。
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【制度による推進】 DPC制度における病床区分の見直しや、加算評価の整備といった国の制度改革が、各病床機能の適切な移行と連携を促進しています。
(考察)
急性期から包括期、そして慢性期へと医療段階が進むにつれて、焦点は「患者さんの状態の安定化」から「在宅・地域での生活支援」へと移っていきます。各フェーズにおいて、適切な人員体制、診療報酬制度、そして地域との連携を強化することが、病床機能の最適化と、持続可能で質の高い医療提供体制の実現につながるでしょう。