2026年度改定に向けた課題整理「外来医療その1、データ提出加算その1、オンライン診療その1」
今回示された課題は、2026年度診療報酬改定の見直しポイントになると考えられます。検討事項は、医療提供体制の変革や医療DXの推進を見据えた、今後の診療報酬改定の重要な論点となるでしょう。
■ かかりつけ医機能の強化に向けた課題
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▼かかりつけ医機能全般・制度との連動性
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【点数への影響と方向性】 改正医療法に基づくかかりつけ医機能の制度整備と連動し、かかりつけ医として機能する医療機関に対する「新たな加算」の創設や、既存のかかりつけ医機能を評価した「機能強化加算」の要件見直し・点数引き上げが検討される可能性があります。患者への情報提供の浸透が課題とされており、情報提供の充実が新たな評価要件となることも考えられます。
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【介護サービスとの連携」 「地域包括診療料・加算」や「機能強化加算」の算定を通じて介護連携に積極的な医療機関が多いことから、これらの加算の点数評価の維持・向上、または連携をさらに促進する新たな加算が検討されるでしょう。
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【医師の教育・研修】 かかりつけ医機能に関する研修修了医師の割合が低い現状を踏まえ、研修受講を要件とする加算の新設や、「地域包括診療料・加算」や「機能強化加算」の要件強化(研修修了者の配置義務化など)が議論される可能性があります。
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【医療DXの活用】 地域での情報共有基盤としての医療DX推進は、将来的には情報連携に対する新たな評価点数や、既存の点数におけるDX活用要件の追加につながる可能性があります。
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▼地域包括診療料・加算
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【点数への影響と方向性】 診療料の算定回数は減少傾向にある一方、加算は増加傾向にあることから、診療料の算定要件の緩和や点数の見直し、または加算のさらなる拡充が検討される可能性があります。
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「24時間対応薬局との連携不足」や「常勤医確保の困難さ」といった算定を妨げる体制課題の解消策が講じられれば、より多くの医療機関が算定しやすくなり、点数獲得の機会が増えることが期待されます。
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▼生活習慣病管理料
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【点数への影響と方向性】 2024年度改定後の影響検証を踏まえ、患者視点での適切な管理を促進するための点数体系の見直しが検討されます。
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「療養計画書の作成負担が大きい」という課題に対し、計画書の簡素化や作成負担軽減策が導入されれば、算定する医療機関が増え、点数獲得の機会が広がる可能性があります。高齢者の管理における個別化や眼科・歯科受診勧奨の推進は、新たな加算の創設や、既存の点数における評価要件の追加につながるかもしれません。
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▼小児かかりつけ診療料
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【点数への影響と方向性】 「発達障害等に関する研修」や「虐待に関する研修」の受講状況を踏まえ、医師の専門性向上を促すための新たな加算や、既存の点数における要件強化が検討されるでしょう。「常勤医確保の困難さ」といった届出の障壁が解消されれば、算定可能な医療機関が増え、点数獲得につながることが期待されます。
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▼データ提出加算の活用拡大
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「入力のための人員確保ができない」ことが最大の障壁であるため、入力負担の軽減や人員確保への支援策が検討されます。DPCデータなどを用いた施設基準の評価精度向上や、そのためのデータ収集・活用促進が図られます。
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■ オンライン診療に関する課題
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▼D to Pのオンライン診療(患者と医師が直接行うオンライン診療)
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初診からの向精神薬処方や、遠隔地の患者を多く診療する実態を踏まえ、その評価のあり方が引き続き検討されます。情報通信機器を用いた精神療法についても、実態調査と適切な評価方法が議論されます。
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▼D to P with Dのオンライン診療(患者が別の医師といる場合のオンライン診療)
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遠隔連携診療料の算定が非常に少ない現状(2023年度10件)を受け、算定促進のための課題解決が検討されます。医療的ケア児や訪問診療における専門医連携など、対象拡大を含めた評価のあり方も議論される可能性があります。
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▼D to P with Nのオンライン診療(患者が看護師等といる場合のオンライン診療)
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規制改革実行計画で指摘されている、看護師等による診療補助行為に係る診療報酬の算定方法の不明確さを明確化・見直しが検討されます。オンライン診療で「対面診療であればすぐに受けられる検査や処置が受けられない」と感じる患者が多いことから、D to P with Nの活用による課題解決が模索されます。CPAP療法や外来栄養食事指導料において、オンライン診療の特性を活かした活用を促すための要件見直しも視野に入っています。
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▼へき地等におけるオンライン診療の活用
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へき地医療拠点病院の主要事業にオンライン診療の活用が明記されたにもかかわらず、実際の活用実績が低い(巡回診療の7.1%がオンライン診療)ことが課題です。オンライン診療の算定が都市部に集中し、算定ゼロの医療圏がある地域格差の是正に向けた取り組みが検討されます。
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