「重症度、医療・看護必要度Ⅱの要件化の対象拡大とその届出状況の高さ」と「DPC制度のデータ提出要件の厳格化」
2025/05/30
2025月5月22日、中医協の診療報酬調査専門組織(入院医療等の調査・評価分科会)2025年度第2回入院・外来医療等の調査・評価分科において、「急性期入院医療について(その1)・高度急性期入院医療について(その1)」が審議されました。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001491505.pdf
今回の審議の中で最もインパクトのある事項は、「重症度、医療・看護必要度Ⅱの要件化の対象拡大とその届出状況の高さ」、そしてそれに伴う「DPC制度のデータ提出要件の厳格化(令和8年度以降)」です。その理由としては、以下の点が挙げられます。
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▼急性期医療評価の基盤となる「重症度、医療・看護必要度」の浸透と厳格化:
- 急性期入院医療の評価において、看護師等の配置だけでなく、患者の重症度や必要な医療・看護の内容を客観的に評価する「重症度、医療・看護必要度」の重要性は年々増しています。特に「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」は、レセプト電算処理システム用コード(診療実績データ)を用いた評価を要件化することで、医療従事者の手入力による負担軽減と評価の客観性・適正化を目指すものです。
- 急性期一般入院料1を届け出ている施設の99.0%が「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」を届け出ているという速報値は、診療報酬改定の意図する方向(データに基づく評価の推進、医療の質の客観的担保)が、主要な急性期病院において極めて高いレベルで受け入れられ、かつ実践されていることを示しており、これは非常に大きなインパクトです。
- この高い届出率は、医療機関が単に点数を追うだけでなく、将来の医療提供体制を見据え、データ活用による業務効率化と医療の質の向上に取り組んでいる証拠と言えるでしょう。
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▼DPC制度におけるデータ提出要件の厳格化と連動:
- 重症度、医療・看護必要度Ⅱの導入拡大は、DPC制度におけるデータ提出の質と量にも直接的に影響します。資料内で、DPC対象病院の基準として「1月あたりデータ数が90以上」や「適切なデータ作成に係る基準(コード使用割合の制限、記載矛盾の制限など)」が新たに位置づけられ、令和8年度診療報酬改定時より制度参加・退出の判定に用いられることが明記されています。
- これは、単にDPCを算定するだけでなく、質の高い正確なデータ提出が病院運営の根幹に関わる重要な要素になることを意味しており、医療機関にとってデータマネジメント体制の強化が喫緊の課題となることを示唆しています。
- 重症度、医療・看護必要度Ⅱの高い普及率とDPCデータ要件の厳格化は、日本の急性期医療の評価と診療報酬体系が、よりデータ駆動型(データ・ドリブン)へと大きく舵を切っているという、医療システム全体の構造変化を象徴する出来事と言えるでしょう。
もちろん、「地域における急性期病院の多様な役割と評価の課題」も非常に重要な点ですが、これはむしろ今後の議論の方向性や課題提示の側面が強く、「既にこれだけの医療機関が新たな評価システムに適合し、かつそのデータ提出要件がさらに厳しくなる」という現状認識とその将来への影響という点で、上記の2点が最も現時点でのインパクトが大きいと考えられます。