かかりつけ薬剤師指導料の算定で注意すべきこと

最終回は特別編として、株式会社オオノの伊藤みどりさんに、かかりつけ薬剤師指導料の算定で注意すべきことをお聞きしました。
 
伊藤さんは、宮城県薬剤師会 社会保険委員会の保険薬局業務研修会で、調剤報酬の算定要件について講義するなどご活躍されています。また、昨年新たに株式会社オオノの医療情報安全管理室の室長に就任されたとのことで、医療安全の取り組みやこれからの薬剤師に対するお考えなども伺いました。
 
インタビュアー 富永敦子

保険薬局としては、実績を示していかないといけないと思います。

富永「保険薬局」として意識をどう持つべきでしょうか?

伊藤さん2年ごとに調剤報酬改定がありますが、これは、国として薬局・薬剤師をどうしていくかの方向性を示しているのです。社会保障費の限られた財源の中で、国として薬剤師の活用をどう図るかを示していると考えられます。薬局の機能を発揮してほしいというメッセージでもあります。

前回の改定では「かかりつけ薬剤師指導料」の算定がメッセージでした。以前、新規に設定された改定では「特定薬剤管理指導加算」や「乳幼児服薬指導加算」もメッセージでした。目的があって設けられた算定ですので、ぜひ算定要件を満たすように業務を行ってほしいと思っております。

 
全く加算を算定していない薬局があります。その理由を聞くと、要件をみたすかどうか心配だとおっしゃいます。また、患者さんへの負担軽減のために算定していないと言う方もいます。が、やはりこれらの加算を算定していない薬局は、それなりの内容しか書かれていない薬歴が多いように思います。
 
特に、前回の調剤報酬で追加された「かかりつけ薬剤師指導料」に対しては、保険薬局としては実績を示していかないといけないと思います。算定により実績を示すことで「保険薬剤師」として国から求められている機能を果たしている、と姿勢を見せていくことが大切です。在宅業務や後発医薬品の使用推進なども含め、保険薬局として求められていることをしっかり受け止めて、算定していく方法を考えてはいかがでしょうか。

富永オオノで行った医療安全についての取り組みを教えてください。

伊藤さん医療安全の取り組みは、調剤過誤対策だけではありません。処方鑑査により禁忌投与、副作用などを未然に防ぐことも、患者さんの安全を守るという意味で、医療安全の一環であると考え取り組んでいます。処方鑑査を確実に行い、患者さんの安全を守るという行為は、医薬分業の根幹です。

 
弊社で今年2月を「医療安全月間」として、1か月に実施した患者さんの安全を守るための取り組みをあげてもらいました。その結果、85%の薬局から報告があり、47店舗で76件の取り組みが報告されました。内訳として、投与量・用法変更の疑義照会(26%)が一番多かったのですが、既往歴、副作用歴(禁忌投与)からの疑義照会(23%)もあり、重複投薬のための疑義照会(13%)、相互作用のための疑義照会(5%)も集まりました。
 
今回の結果から、患者情報を把握したうえで薬剤師が処方鑑査を行うことにより、患者さんの安全を守ることができることがわかりました。患者の情報を把握していない状況や処方鑑査もされない場合には、患者さんの安全が担保できない可能性があります。その場合の薬剤師の責任は大きいです。
 
弊社では、開局当時から医師と連携してきた薬局が多いので、日頃から医師とのコミュニケーョンはとりやすく、また情報提供しやすい環境であると思います。つまり医師に疑義照会をしやすい状況にあります。

実際は疑義照会をしていても医師に遠慮して記録として残さない薬局もあると思いますが、こういった取り組みを形にしていくことで、薬剤師の関与が明確になるので、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

富永これからの薬局についてのお考えをお願いします。

伊藤さん数年前に薬歴の未記載から始まった薬局のバッシングをきっかけに、今も逆風が吹いていると感じます。ある講演会で、5万8千軒の薬局は再編されて、3万軒位になるのが妥当だろう、という話も聞きました。

 
では、薬局として生き残るためにはどうしたらいいかということですが、保険調剤とともに、地域住民に対して自分の薬局は何ができるのかを考えることだと思います。自分の薬局の売りは何かをしっかりと考えて、アピールすることも必要になってくると思います。
 
今、日本は健康に対しての意識が高まってきている状況です。国としての施策もあります。セルフメディケーション税制も始まりました。企業も個人も健康のために動き出しています。そこで、この機会に地域で選ばれる「かかりつけ薬局」としてできることを考えてみましょう。
 
現在、私は医療安全の取り組みとともに医療情報の発信をさせていただいております。
「情報室レター」や「調安だより」という社内報を利用して、薬局で取り組める「禁煙指導」や「認知症対策」等について情報配信しています。これらの取り組みを薬剤師会や行政と絡みながら、社員の意識を変え、地域住民ヘのサポートにつなげていきたいと思っています。
 
「かかりつけ薬局」として生き残れるように、薬剤師・薬局ができることを提案し、選ばれる「かかりつけ薬局」づくりを今後も応援していきたいと思います。

編集後記

伊藤さんは、入社6年目に自ら希望して休職し、2年間の「厚生省の薬剤師研修」に参加しました。この薬剤師研修は、病院と薬局の先進的な取り組みを学ぶという当時画期的な研修でした。まさに「目からうろこ」であったと聞いております。その後、薬学に関する学会等の参加などさまざまな経験をもとにオオノで薬局づくりを実践されてきました。県薬剤師会の社会保険委員として保険調剤の業務についても深い見識があることから、保険薬局としての正しい算定についても教えていただき、また、今の薬局の置かれている状況を踏まえて何をすべきかをお話しいただきました。
 
「かかりつけ薬剤師に聞く」という企画をお読みいただきありがとうございました。国が薬局機能として期待している「かかりつけ薬局」に向かって進むうえで、皆様の業務にお役立て頂ければ幸いです。
伊藤みどり 氏
株式会社オオノ医療情報安全管理室 室長
(一社)宮城県薬剤師会 社会保険委員 広報委員
(公社)日本薬剤師会   編集委員