かかりつけ薬剤師に聞く
患者さんが選んで来てくれることが「かかりつけ」
今回はゆうやけ調剤薬局の管理薬剤師の川村亮介さんに、かかりつけ薬剤師としてのお考えをお聞きしました。
この店舗は、小児の急性の疾患以外にも発達障害の子供達を診察している小児科の処方箋を多く応需していることが特徴です。薬局内は子供達の声でにぎわっています。スタッフ全員、家族に子供がいらっしゃるとのことで、お母さん目線で患者さんに接しているのが他の店舗と違うところですと川村さんはおっしゃっていました。待合室にはベッドや子供が遊べるスペースはもちろん授乳スペースもあり、子供達とお母さんを大事にしていることがわかります。
インタビュアー 富永敦子
気軽に入れる薬局を目指しています
富永薬局全体で心掛けていることはありますか?
川村さん薬局は、親しみやすい雰囲気が大事だと思います。調剤で忙しくても「大変だ」という雰囲気をできるだけ出さないように全員で気をつけています。自分の理想はなんらかの病気で来局した患者さんが、薬局で話しているうちに笑顔になって帰ってもらえることです。
そのためにはどのような対応をしたらよいかを、日々薬剤師も事務も意見を出し合っています。薬局の中に授乳室をつくったのも、その意見をもとに本部に提案して掛け合いました。子供を連れて荷物も多い母親に服薬指導をすることが多いので、カウンターに呼ぶのではなく患者さんのそばで行うことも多いです。患者さんごとにどう対応したらよいかをすぐに判断していきます。子供をあやしたりすることもあります。
この薬局では、子供達の成長を見守っていくことができうれしく思います。何年かぶりに来局した患者さんに「大きくなったね」と声掛けしています。
富永今後めざす薬局づくりについて教えてください。
川村さん「ちょっと薬局で聞いてみようか」と気軽に入ってくることができる薬局をめざしています。薬のことでなくても子供の寝かせ方などで困っているなら、こうしたらいいのではとアドバイスしてあげたいと思います。子育ての仕方などに対してサポートできればと考えています。相談しやすい環境づくりに力を入れていきたいです。
生活雑貨やサプリメントなども置くことで、処方箋以外の相談も親身になって受けながら健康サポートができればと思っています。
地域貢献として私は小学校の学校薬剤師の活動もしているので、子供たちに環境検査の時にでもいろいろな話をしていきたいと思っています。地域に根差した活動も大切にしたいです。
編集後記
川村さんは、患者さんの横で話を聞き患者さんと一緒に考えることができる薬剤師です。「かかりつけ薬剤師になることが目的になってはいけない。かかりつけ薬局で相談しようと患者さん自身が来てくれることがかかりつけなのです。」と患者さん側に立った言葉が印象的でした。
インタビューでは、穏やかな口調でしたが、「処方箋通りに薬を渡すだけではなく、患者さんに合わせたアドバイスをしていきたい。患者さんの不安を取り除いてあげたい。」という強い思いを感じました。将来を担う子供達と地域の方々の健康を守るために、ますますのご活躍を期待しています。
6人のインタビューを終えて
6人の薬剤師の方に、かかりつけ薬剤師としての思いをお聞きしてまいりました。それぞれの薬剤師さんが、かかりつけ薬局とは何かを考え、自分なりの方法で患者さんと向き合っていることを知って、胸が熱くなる思いがしました。お聞きしてみると全員が「相談しやすい薬局づくり」をめざしていることがわかりました。保険調剤(調剤報酬)の中で「かかりつけ薬剤師」制度があるわけですが、ひとりでも二人でも算定を始めてみれば、見えてくることもあります。様々な知識も必要となってきます。
「患者さんとの関係を大切にする」ことで「患者さんが頼ってくれる」「薬剤師の意識が高まる」「他の患者さんのサポートもうまくいく」というサイクルがまわるのだと思います。
8年後の地域包括ケアシステムの中で薬剤師としての自分の立ち位置はどうなっているでしょうか。今回の連載を参考にしていただき、自分ができることをチャレンジしていただきたいと思います。そして是非皆さんの活動を教えてください。新しい時代に向かってがんばりましょう。