新たな地域医療構想策定ガイドラインのアウトラインや考え方を確認(厚労省)
2025/08/28
厚労省は8月27日、地域医療構想及び医療計画等に関する検討会を開催し、新たな地域医療構想に対応したガイドラインの策定について2回目の審議を行った。
ガイドラインは、各都道府県が地域の状況を踏まえ、医療機関の連携・再編・集約化を推進し、持続可能で効果的な医療提供体制を構築するための指針と位置付けられる。
今回は、ガイドラインの策定に向けて、新たな方向性を3つの柱「区域・医療機関機能」「医療と介護の連携」「構想策定のあり方」について確認した。
1. 「区域・医療機関機能」医療機関の役割分担を明確化
地域の実情に合わせた医療機関の役割分担と再編が焦点となる。
地域の実情に合わせた医療機関の役割分担と再編が焦点となる。
【大学病院の新たな役割】 地方の大学病院は高度医療から一般診療まで幅広く担い、医師派遣拠点としても機能。一方、大都市の大学病院は、より専門性の高い高度医療や臨床研究に特化することが検討。
【急性期医療の集約化】 医療資源の限られる地方では、急性期医療を提供する病院をできる限り1か所に集約する方向。特に人口20万人未満の地域は、隣接区域との合併も視野に入れるなど、持続可能な体制構築が求められる。
【ICT活用とアクセス確保】 人口の少ない地域では、オンライン診療や巡回診療、患者送迎バスの整備などを通じて、医療へのアクセスを確保。
2. 「医療と介護の連携」シームレスな連携を強化
高齢化が進む中で、様々なシチュエーションにおける医療と介護のシームレスな連携が不可欠となる。
高齢化が進む中で、様々なシチュエーションにおける医療と介護のシームレスな連携が不可欠となる。
【在宅も含めた慢性期医療】 病院の病床数だけでなく、訪問診療や訪問看護、介護保険施設など、地域全体の医療・介護資源を総合的に考慮し、慢性期患者に対応する体制を構築。
【介護施設と病院の密な連携】 介護施設における入所者の急変時対応や、病院の看護師による電話相談・訪問支援などが義務化・推進。病院と診療所、介護施設が患者情報を共有するシステムの導入も推進。
【在宅医療の圏域を柔軟に設定】 在宅医療の体制構築を円滑に進めるため、圏域は二次医療圏にとらわれず、市町村単位など地域の実情に合わせて設定。
3. 「構想策定のあり方」住民参加型で実効性のある計画策定へ
構想の実現には、関係者の合意形成と具体的な行動計画が欠かせない。
構想の実現には、関係者の合意形成と具体的な行動計画が欠かせない。
【住民への情報共有と参加促進】 地域医療の現状や課題、医療機関の役割分担の必要性を住民が理解できるよう、積極的な情報発信と、住民が参加できる議論の場が求められる。
【具体的なグランドデザインとPDCAサイクル】 国全体で明確な将来ビジョンを示し、各地域がそれに沿って計画を立て、実行、評価、改善を繰り返すサイクルを確立。
【民間病院も巻き込んだ再編】 公的病院だけでなく、民間病院も巻き込んだ再編・集約化を進めるため、医療経営者が納得できる具体的な支援策や制度設計が重要。
【複数案の比較検討】 地域の課題解決に向け、複数の対応案を医療の需要と供給、アクセス、経営、医師確保など多角的な観点から比較評価し、合意形成を図るプロセスが重視。
(参考:1回目の審議=8月8日のポイント)
新たな地域医療構想では、地域の医療提供体制を維持・強化するため、医療機関の役割分担を明確化する「医療機関機能」の概念が重視されている。「医療機関機能」は、「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「急性期拠点機能」「専門等機能」「医育及び広域診療機能」の5つに分類される。
【「医療機関機能」の協議・設定】 救急車の受け入れ件数、手術件数、医師数、病床数、施設の老朽化状況、地域シェア、人口規模や医療需要の変化、高齢者施設との連携状況など、様々なデータが参考にされる。
しかし、これらはあくまで参考であり、画一的な基準ではなく、地域ごとの実情に応じた柔軟な検討に資する点をガイドラインに盛り込む形となる。「医療機関機能」の明確化は、医療従事者の分散による救急対応の困難化や、医療機器のコスト、施設の老朽化といった課題に対応するためにも不可欠である。
【「医療従事者」の確保】 将来の人口構造の変化と医療需要を見据え、各職種の課題に対応しながら、医療提供体制全体の効率化と質の向上を図ることが重要なポイントとなっている。