介護福祉士国家試験「パート合格」導入が介護事業所に与えるインパクト
2025/06/04
今回は、2025年度(第38回)介護福祉士国家試験=2026年1月25日(日)実施から導入される「パート合格(合格パートの受験免除)」制度について、ポイントを確認していきます。
「パート合格(合格パートの受験免除)」制度の導入は、介護人材の確保・育成という喫緊の課題に対し、介護福祉士の受験者数を増加させ、資格取得を促進することを目的としており、介護事業所の運営に以下のインパクトを与えます。
■ 介護事業所に与えるポジティブなインパクト
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▼介護福祉士資格保有者の増加と質の向上
- 試験が分割され、学習の負担が軽減されることで、これまで受験を躊躇していた層や、一度不合格になった学習者が再挑戦しやすくなります。これにより、介護福祉士の絶対数が増加することが期待されます。
- パート合格制度により、個々の学習者が苦手な科目に集中して学習できるようになるため、知識の定着度が向上し、結果として介護福祉士全体の専門性の維持・向上に寄与する可能性があります。これは、利用者への質の高いサービス提供につながります。
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▼人材確保・定着への貢献
- 介護福祉士資格は、介護サービスの質を担保するだけでなく、介護職員のキャリアアップや賃金向上にも直結します。資格取得のハードルが実質的に下がることで、職員が資格取得を目指しやすくなり、事業所内のモチベーション向上や人材の定着に貢献する可能性があります。
- 介護福祉士資格を持つ職員が増えることは、事業所のサービス提供体制加算などの算定要件を満たしやすくすることにも繋がり、経営的なメリットも期待できます。
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▼外国人介護人材の資格取得促進
- 特に、経済連携協定(EPA)等で来日する外国人介護人材にとって、日本語での国家試験は大きな壁でした。パート合格制度は、学習負荷を分散させることで、外国人材の合格率向上に繋がり、さらなる外国人材の活躍推進が期待されます。事業所にとっては、多様な人材の確保に繋がりやすくなります。
■ 介護事業所が留意すべき点・対策
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▼制度変更への理解と職員への周知
- 事業所は、このパート合格制度の内容を正確に理解し、介護福祉士を目指す職員や実務者研修修了者等に対して積極的に情報提供・周知を行う必要があります。職員の学習計画やモチベーションに大きく影響するため、丁寧な説明が求められます。
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▼資格取得支援の強化
- 制度の変更を好機と捉え、事業所として職員の介護福祉士資格取得に向けた支援体制をさらに強化することが考えられます。具体的には、学習時間の確保、教材費や受験費用の一部補助、模擬試験の実施、資格取得に向けた勉強会の開催などが挙げられます。
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▼採用戦略への影響
- 今後、介護福祉士の資格取得者が増えることで、採用市場における介護福祉士の資格の持つ意味合いが変化する可能性もあります。事業所は、採用戦略を再検討し、資格取得への意欲が高い人材の確保に努める必要があるでしょう。
今回の制度導入は、介護人材不足が深刻化する中で、国家資格である介護福祉士の資格取得を促進し、介護サービスの質を維持・向上させるための重要な一歩と言えます。介護事業所は、この変化を前向きに捉え、積極的に対応することで、事業所の持続的な発展と地域への貢献を目指すべきでしょう。