「原則として医行為ではない行為」に関するガイドラインによる介護職員の対応
2025/06/02
今回は「原則として医行為ではない行為」に関するガイドラインに基づく介護職員の対応を確認していきましょう。
(介護保険最新情報Vol.1385:https://www.mhlw.go.jp/content/001493555.pdf)
介護職員が「原則として医行為ではない行為」を実施する上での「すべき点」と「すべきではない点」をガイドラインをもとに整理しました。
■ 介護職員が「すべき点」
1. 行為の理解と安全な実施
- 「原則として医行為ではない行為」の範囲と条件を正確に理解する:ガイドラインに示されている具体的な行為(体温測定、血圧測定など)とその際に付されている通知上の条件(p.12-18参照)を熟知する。
- 各行為の基本的な実施方法を習得する:第2部の各論に記載されている手技や観察項目、必要な物品などを確認し、手順通りに実施する。
- 利用者の状態を常に観察する:行為中や行為後に利用者の顔色、呼吸、痛み、気分不快など、いつもと異なる変化がないか注意深く観察する。
- 感染対策を徹底する:手指衛生や適切な個人防護具(手袋、マスクなど)の使用を含め、標準予防策と感染経路別予防策を遵守する。
2. 利用者・家族とのコミュニケーション
- 行為内容について丁寧に説明し、同意を得る:利用者やその家族に対し、実施する行為の内容、目的、期待される効果、潜在的なリスクなどを分かりやすく説明し、同意を得てから実施する。
- 利用者の意向を尊重する:常に利用者の意思を確認し、尊厳を保持しながら支援する。
- 相談しやすい環境を作る:利用者や家族が、介護職員の行う行為についていつでも相談できるような関係性を築く。
3. 医療職との連携と報告
- 病状の確認と相談を怠らない:利用者の病状が不安定である場合や、専門的な管理が必要な状態かどうか、医師、歯科医師、看護職員に確認する。
- 異常時は速やかに医療職へ報告・連絡する:測定値が異常範囲内であったり、利用者の体調に急変や異変があった場合は、迷わず直ちに医療職へ報告し、指示を仰ぐ。
- 実施計画に基づいた連携:看護職員が実施計画を立てている場合は、それに従って行為を行い、結果を報告・相談することで密接な連携を図る。
- 記録を正確に行う:測定値、実施時間、測定部位、利用者の状態の変化などを、事業所指定の様式に従って正確に記録する。
4. 事業所・組織としての取り組みへの参加
- 研修や勉強会に積極的に参加する:事業所が提供する「原則として医行為ではない行為」に関する研修や勉強会に積極的に参加し、知識・技術の向上に努める。
- ヒヤリ・ハットや事故の共有:発生したヒヤリ・ハットや事故について、事業所内で共有し、再発防止策の検討に協力する。
- マニュアルの確認と活用:事業所のマニュアルや決まりを確認し、それに従って業務を行う。必要に応じて、本ガイドラインを参考に改善提案を行う。
■ 介護職員が「すべきではない点」
1. 医行為の実施
- 医師や看護師の免許が必要な医行為を単独で実施しない:「原則として医行為ではない行為」として明示されているもの以外の医行為は、決して行ってはいけません。
- 例:舌下や直腸での体温測定、アネロイド式血圧計や水銀血圧計による血圧測定、簡易血糖測定器による血糖測定、インスリン注射の実施そのもの、インスリン注射器の針を抜いて処分する行為、酸素吸入の開始や停止、皮膚の褥瘡処置など。
- 医学的判断を行うこと:測定された数値(体温、血圧、血糖値、SpO2など)を基に、投薬の要否や診断など、医学的な判断を下すことは絶対に行わない。
2. 不適切な判断と対応
- 自己判断で行為を中断・変更しない:医療職からの指示や事業所のマニュアルに反して、自己判断で行為を中断したり、方法を変更したりしない。
- 利用者の状態を過小評価しない:利用者の体調に異変があっても「大したことない」と自己判断せず、必ず医療職に報告する。
- 不正確な情報伝達:測定値や利用者の状態を報告する際に、曖昧な表現や憶測で伝えるのではなく、事実に基づいた正確な情報を伝える。
3. 安全管理の怠慢
- 無資格・無経験での実施:適切な研修や訓練を受けていない状態で「原則として医行為ではない行為」を実施しない。
- 記録の怠慢や虚偽記載:実施した行為や観察結果を記録しない、あるいは虚偽の記録を行う。
- 感染対策の不徹底:手指衛生を怠ったり、必要な個人防護具を使用しなかったりするなど、感染対策を怠る。
- 利用者の同意なしでの実施:利用者や家族の同意を得ずに、これらの行為を実施しない。
これらの点を理解し、実践することで、介護職員は利用者に安全で質の高いサービスを提供し、多職種連携を円滑に進めることができます。