「規制改革推進に関する答申(2025年度)」のポイント整理(医療・介護分野抜粋)
2025/05/30
今回は骨太方針2025にも関連してくる「規制改革推進に関する答申(2025年5月28日)」のポイント(医療・ヘルスケア・介護分野抜粋)を整理していきます。
この答申は、人口減少、少子高齢化、人手不足といった日本の構造的な課題を克服し、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現するため、規制改革を推進することを目的としています。
■ 医療・ヘルスケア分野
1. 地域におけるオンライン診療の更なる普及及び円滑化
- 医師、患者双方にとって新たな診療形態の選択肢であるオンライン診療について、地域での医療提供体制維持や、働く人々の受診時間ミスマッチ解消、災害時対応等の観点から、医事法制上の位置付けを明確化し、運用の基準を明確化する必要がある。
- ▼オンライン診療専用車両等の活用円滑化
- オンライン診療専用車両やブースの活用における回数・場所の制限や事前届出の手続き負担を軽減するため、医事法制上の位置付けの明確化と解釈運用の見直しを検討。
- ▼オンライン診療指針の制度化
- 現行の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に必要な内容を医療法令に規定し、オンライン診療の定義、医療機関の届出義務、実施基準などを明確化。
- ▼看護師等による診療補助行為の検討
- オンライン診療受診施設における看護師等による診療補助行為の実施可否を検討。
- ▼オンライン診療受診施設の要件緩和・明確化
- 届出事項を必要最低限にし、標準様式を作成。設置者に医療機関または医療従事者であること等の要件を設定せず、常駐や専任の必要性を明確化。
- ▼オンライン診療に係る診療報酬上の評価の見直し
- D to P with Nにおける診療報酬の算定方法の明確化や、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料等の算定要件の見直しを検討。
- ▼オンライン診療活用事例の情報発信・環境整備
- 各制度運用の活用実態を継続的に情報収集し、具体的な場所類型ごとの活用事例を公表。
2.地域の病院機能の維持に資する医師の宿直体制の見直し
- 医師不足が深刻化する中で、地域の医療提供体制を維持するため、特に夜間の診療需要が限定的な病院において、医師の宿直体制を柔軟化する必要がある。
- ▼医師の宿直兼務の検討
- 一定の要件の下で、1名の医師が複数の病院の宿直対応を兼務で行うことを可能とするよう検討。地域医療の維持、医師の偏在・不足への対応、限られた資源の重点配置の観点から必要とされている。
3. 在宅医療における円滑な薬物治療の提供
- 超高齢社会において、患者が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、在宅医療における薬物治療の提供体制を強化する必要がある。
- ▼在宅医療における薬剤師の役割拡大・明確化
- 薬剤師による在宅医療における薬学的管理指導の範囲を明確化し、より柔軟な対応を可能にするための制度見直しを検討。
- ▼オンライン服薬指導の更なる活用
- 在宅患者へのオンライン服薬指導の要件緩和や、対面指導との組み合わせによる効果的な活用を促進する措置を講ずる。
4. 救急救命処置の範囲の拡大
- 医療の高度化と地域医療体制の維持のため、救急救命士が行える処置の範囲を拡大し、患者の救命率向上と医師の負担軽減を図る。
- ▼特定行為の追加検討
- 救急救命士が行える特定行為(気管挿管、薬剤投与等)の範囲を、医学的根拠と安全性に配慮しつつ拡大するための検討を進める。
- ▼教育・研修体制の整備
- 処置範囲の拡大に伴う救急救命士の教育・研修体制の充実を図る。
5. 利用者起点に立った一般用医薬品の適正な販売区分及び販売方法
- 一般用医薬品の利用者利便性向上と、適正な使用推進のため、販売区分や販売方法を見直す。
- ▼スイッチOTC化の促進
- 医療用医薬品から一般用医薬品へのスイッチOTC化を促進するための評価基準や手続きを明確化。
- ▼インターネット販売の規制緩和
- 一部一般用医薬品のインターネット販売に関する規制を見直し、利便性向上と安全性の両立を図る。
6. 濫用等のおそれのある一般用医薬品の販売規制等の適正化
- 濫用のおそれのある一般用医薬品の適正な販売を確保し、健康被害を防止する。
- ▼販売時の情報提供強化
- 濫用のおそれのある医薬品販売時における薬剤師等による情報提供義務を強化。
- ▼購入個数制限の明確化
- 購入個数制限の基準を明確化し、薬局等における販売時の判断を支援。
7. 要指導医薬品の販売区分、販売方法及び服薬指導方法の見直し
- 要指導医薬品の適正な販売を確保しつつ、国民の医薬品アクセス向上を図る。
- ▼販売区分の見直し
- 要指導医薬品の販売区分を、薬剤師による対面指導が必要なものと、そうでないものに分類し、販売方法の柔軟化を検討。
- ▼オンライン服薬指導の活用
- 要指導医薬品についてもオンライン服薬指導の更なる活用を促進するための措置を講ずる。
8. 一般用検査薬への転用の促進
- 国民が日常的に自身の健康状態を把握できるよう、医療用検査薬の一般用検査薬への転用を促進する。
- ▼転用促進のための基準明確化
- 一般用検査薬への転用を促進するための安全性評価基準や手続きを明確化。
- ▼多様な検査薬の普及
- 糖尿病検査薬や感染症検査薬など、国民のニーズが高い検査薬の一般用転用を推進。
9. 公的データベース等における医療等データの利活用法制等の整備
- 医療情報の利活用を促進し、研究開発や医療の質の向上に繋げるため、公的データベースにおける医療等データの利活用法制を整備する。
- ▼PHR(Personal Health Record)の活用促進
- 個人が自身の医療情報を管理・活用できるPHRの普及を促進し、データの連携を強化。
- ▼医療ビッグデータの活用推進
- 匿名加工された医療データを、研究機関や企業が利用しやすい環境を整備。
10. 医療等データの包括的かつ横断的な利活用法制等の整備
- 複数の医療機関や介護施設に分散する医療等データを横断的に利活用し、地域医療連携や新薬開発等に貢献する。
- ▼データ連携基盤の構築
- 医療機関間や介護施設間でのデータ連携を可能にするための共通基盤の構築を推進。
- ▼データ利活用のガイドライン策定
- 医療等データの利活用におけるプライバシー保護やセキュリティ確保に関するガイドラインを策定。
11. 治験に係る広告規制の見直し
- 治験への参加を希望する患者が適切な情報にアクセスしやすくするため、治験に係る広告規制を見直す。
- ▼広告表示事項の明確化
- 治験の内容や参加条件に関する広告表示を明確化し、患者の理解を促進。
- ▼広告媒体の柔軟化
- 治験に関する広告の掲載可能な媒体を柔軟化し、より広範な情報提供を可能にする。
■ 介護・障害福祉分野
12. 地域の実情に応じた介護サービス提供体制等の見直し
- 地域の実情に応じた介護サービス提供体制を構築し、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できる環境を整備する。
- ▼地域包括ケアシステムの強化
- 医療と介護の連携を強化し、地域における多職種連携を推進。
- ▼訪問介護の担い手確保
- 訪問介護員の確保に向けた、規制緩和や処遇改善策を検討。
- ▼混合介護の推進
- 保険外サービスとの組み合わせを可能にする混合介護の推進を検討。
13. 障害福祉分野における申請・届出等に関する手続負担の軽減
- 障害福祉サービス利用者や事業者の手続負担を軽減し、サービス利用の円滑化を図る。
- ▼申請・届出のデジタル化
- 申請・届出手続きのオンライン化を推進し、書面提出の削減を図る。
- ▼添付書類の簡素化
- 申請・届出に必要な添付書類の削減や共通化を進める。
この答申は、日本の直面する課題に対し、規制改革を通じて多角的にアプローチしようとするものであり、特に医療・ヘルスケア、社会保障分野においては、デジタル技術の活用や人材確保、利用者の利便性向上に重点が置かれていることが読み取れます。