「人生の最終段階における適切な意思決定支援の推進」と「身体的拘束を最小化する取組の強化」への医療現場の適応状況
2025/05/30
2025月5月22日、中医協の診療報酬調査専門組織(入院医療等の調査・評価分科会)2025年度第2回入院・外来医療等の調査・評価分科において、「2024年度調査結果(速報)概要」が公表されました。2024年度診療報酬改定の実施状況や、その影響・効果を把握するための調査です。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001496472.pdf 参考資料 詳細1 詳細2
この調査結果で最もインパクトのある事項は、「人生の最終段階における適切な意思決定支援の推進」と「身体的拘束を最小化する取組の強化」への医療現場の適応状況、そしてそれに伴う栄養管理体制の見直し(GLIM基準の活用)の進捗ではないでしょうか。
これらの項目は、診療報酬改定において、単に診療行為の評価だけでなく、患者の人権尊重やQOL(生活の質)の向上、医療安全の確保といった、医療提供の根本的な質の向上に焦点を当てた重要な変更点でした。
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▼人生の最終段階における意思決定支援:
- 入院時に他施設からの情報提供が多くの入院料で高く、自院での意思決定支援も高い割合で実施されていることは、患者中心の医療への意識が高まっていることを示唆しています。これは、従来の「治療優先」から「患者の意思尊重」への医療のパラダイムシフトを反映していると言えます。
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▼身体的拘束の最小化:
- 身体的拘束の指針策定や実施・解除基準の策定が9割を超える医療機関で進められていること、また、身体的拘束最小化チームの設置や具体的な取り組みが広範に実施されていることは、医療安全と患者の尊厳の確保に向けた組織的な努力が浸透しつつあることを強く示しています。これは、患者の身体的自由を尊重し、不要な拘束を避けるという、倫理的にも重要な変化です。
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▼栄養管理体制(GLIM基準の活用):
- 栄養管理手順にGLIM基準を位置づけている施設が70.6%に上ることは、低栄養の早期発見と適切な介入による患者の回復促進、ひいては在院日数短縮や再入院防止といった、臨床アウトカム改善への意識が高まっていることを示唆します。これは、診療報酬改定が単なる金銭的評価だけでなく、エビデンスに基づいた質の高い医療実践を促している例と言えます。
これらの点は、単なる点数改定による収入の変化だけでなく、医療機関の運営体制、医療従事者の意識、そして患者に対する医療提供の質そのものに大きな変革を促すものであり、その適応状況が速報値で確認できたことは、非常にインパクトが大きいと考えられます。特に、倫理的側面や患者中心の医療といった、測定が難しい質の側面での変化が見られる点が重要です。