医薬品市場や薬価制度の問題点、流通改善ガイドライン遵守に向けた指摘(厚労省)
2022/09/01
厚労省は8月31日、医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会の初会合を開催した。医薬品業界の概況を踏まえ、大学教授などの有識者8名の意見を確認した。
流通改善ガイドラインでは、川上(メーカー⇔卸)取引における仕切価・割戻し(リベート)・アローアンスの設定が課題となり、川下(卸⇔医療機関・薬局)取引においては頻繁な価格交渉、過大な値引き交渉、単品単価契約、返品、急配などが課題となっている。薬価の引き下げや新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う受診抑制と手術件数の減少による医薬品の需要の落込みにより、医薬品売上高及び営業利益が大幅に減少し、株式上場大手卸6社の経営環境は極めて厳しい状況となっている。
有識者から医薬品市場や薬価制度の問題点として、日本の医薬品市場の魅力・市場の予見可能性が低下してきた点、資源価格の高騰や急激な円安によるインフレが影響を及ぼす点、医薬品の安定供給に支障(特に後発薬の供給不足による欠品の多発と混乱の長期化)が生じている点、薬価制度により先発品メーカーの基礎体力が奪われている点、新薬開発の停滞によりイノベーティブ新薬が日本の患者に迅速に届かない点、新薬が諸外国より低い薬価で収載されている点、薬価算定の特例的なルールとその評価が多様化して複雑化(新しい概念が頻繁に導入されて薬価基準制度全体としての原理原則が不明瞭)してきた点などが指摘された。
こうした問題点を踏まえ、流通改善ガイドラインを遵守していくには、川上取引において仕切価をやめない限り一次売差マイナスは永遠不滅と指摘し、川下の納入価を単品単価にするためには川上の出荷価格を透明な単品単価にするべきだと提言された。
川下取引においては、行き過ぎた市場実勢価引き下げへのペナルティとして薬価差益に応じた調剤報酬に対する減算措置などの検討が必要だとした。
供給不安問題においては、サプライチェーン全体としての情報共有と問題解決のための仕組みづくり、医薬品の供給不足スキームの実効性を高める措置が必要だと指摘された。