介護保険施設やショートステイ(以下、施設)の居住費や食費(以下、居住費等)は、あくまで利用者と施設との契約によることから、施設ごとに自由に設定でき、基準費用額を上回ることも下回ることも可能です。
しかし、以下の様な理由から大半の施設では、基準費用額と同額に設定しています。
介護保険制度には、所得の低い要介護者が施設を利用する際、居住費等の負担を軽減する目的で、施設に対する「特定入所者介護サ−ビス費」という介護給付があります。
対象サービスは、指定介護福祉施設サービス(特養)・介護保健施設サービス(老健)・指定介護療養施設サービス(介護療養型医療施設)・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特養)・短期入所生活(療養)介護(ショートステイ)となります。
例えば、食事の提供に要する費用については、「基準費用額(1,380円)」と「利用者の所得に応じた負担の限度額」の差額が施設に支給されます。
給付の対象者は、所得に応じて3段階に区分され、1日の負担限度額が下記のとおり設定されています。
第1段階:老齢福祉受給者、生活保護受給者等 → 負担限度額:300円
第2段階:合計所得金額+課税年金収入額≦80万円(年額)→ 負担限度額:390円
第3段階:合計所得金額+課税年金収入額>80万円(年額)→ 負担限度額:650円
食費が1,380円(基準費用額と同額)で、第1段階の利用者である場合、1,380円‐300円(負担限度額)=1,080円が「特定入所者介護サ−ビス費」として介護保険により施設は「補足給付」を受けることができます。
しかし、基準費用額を超えた食費を設定し、利用者の負担が限度額を超える場合は、「特定入所者介護サ−ビス費」(補足給付)は支給されません。
そのため、利用者負担段階1〜3の利用者を受け入れる場合、ほとんどの施設が厚労省の定める「基準費用額」に設定しているのです。
また厚生労働省は、食費が「基準費用額」1,380円/日に満たない場合は、その金額を「基準費用額」とすると定めているため、基準費用額を下回る設定に問題はありません。