品川区要介護度改善ケア奨励事業

2018年度の介護報酬等改定においては自立支援が一つのキーワードになると予測されるため、今のうちからアウトカム評価の視点を取り入れた運営を行うことが重要になります。
 
今回は、国や自治体も注目している「品川区要介護度改善ケア奨励事業」の状況や展望等について、品川区福祉部の永尾文子参事と高齢者福祉課施設支援係の岩田正明係長より大変興味深いお話しをたくさん聞かせて頂きました。
 
インタビュアー 関田典義

国にも制度の変更を提言していきたいと思っています

関田品川区をはじめ、滋賀県(民間主導要介護度改善評価交付事業)や岡山市(デイサービス改善インセンティブ事業)、福井県(要介護度改善促進事業)、川崎市(要介護度等改善・維持評価事業)等が事業を実施しており、この動きが徐々に広まってきているように感じています。

11月に行われた未来投資会議(議長:内閣総理大臣)においても、自立支援を後押しするため、2018年度介護報酬改定から、要介護度を改善した事業所に対するインセンティブを制度化するべきとの話も出ています。品川区では先進的にアウトカム評価を取り入れた事業を実施されているので国や他自治体からも注目されているのではないでしょうか。

永尾氏要介護改善事業を実施している自治体で構成される「介護サービス質の評価先行自治体検討協議会」において、2018年度の介護報酬改定に向け、持続可能な介護保険制度への政策提言を行う予定です。実際、厚生労働省や経済産業省から何回か視察に来られ、事業内容や実績、その効果等について質問を受けています。

関田来年度も当事業を継続される予定でしょうか。また、例えば介護職員の処遇改善取り組み状況等をリンクさせる等、新たな評価指標を組み込む予定はありますか。

永尾氏予算要求中ですが、来年度も実施予定でいます。品川区では、セルフチェック等に基づく日々のケアの成果として要介護度が改善されたという捉え方をしています。施設サービス向上研究会と共に、今後も同様の評価指標で事業を実施・検証していくよう考えています。

関田要介護度改善は成果ですので、やはりそのプロセスと関係性がありますよね。国や自治体は、保健医療政策分野と同じように、「ドナベディアンの質評価モデル」をベースに制度を設計しようとしているのですね。最後に、今後の展望について教えて下さい。

永尾氏当事業が軌道に乗り始めましたので、来年度も組織的にサービスを向上させられる取り組みにしていきたいと思っています。しかし、当事業費は一般会計から捻出しており、全て区の税金で行っています。出来れば本来の介護保険制度の原点に返り、介護保険の財源の中で自立支援につなげられる仕組みを作って頂きたいと考えています。そのようなこともあり、「介護サービス質の評価先行自治体検討協議会」に参加して、国にも制度の変更を提言していきたいと思っています。

 


編集後記

品川区介護保険制度推進委員会モニタリング等調査部会が作成する「介護・障害者施設サービスの評価・向上の取り組みおよび介護給付適正化事業によるモニタリングアンケート結果調査報告書(平成28年3月)」を拝見すると、要介護改善ケア奨励事業を実施した結果、介護職員の意欲の向上やモチベーションの維持にもつながっていることが伺えます。

 
品川区と施設サービス向上研究会(介護保険施設等)が連携した独自の取り組みが、介護保険制度の基本理念である自立支援につながっている好事例です。
 
今後も、セルフチェックシートの活用に加え、施設サービス計画書(ケアプラン)等を理解した根拠に基づく介護サービスを提供することが出来れば、利用者の状態維持・改善につながり、介護職員の価値もさらに向上していくのではないかと感じました。
 
品川区福祉部参事の永尾文子様、高齢者福祉課施設支援係の岩田正明様、ご協力ありがとうございました。